声優の地位向上のため、戦い続けた“声優界の父”永井一郎の足跡

声優の地位向上のため、戦い続けた声優界の父永井一郎の足跡の画像1所属事務所「青二プロダクション」公式HPより。

「バッカモ~ン!」

 腑抜けた現代日本にカツを入れるがごとく、毎週日曜日の夕飯どき、全国のお茶の間に響き渡ったあの声をもう聞くことができない。アニメ『サザエさん』の磯野波平をはじめ、数々の人気キャラを演じてたことで知られる声優界の重鎮・永井一郎が、1月27日、急逝した。テレビ番組のナレーション収録のために訪れていた広島市のホテルの浴槽内で倒れているところを従業員が発見。死因は虚血性心疾患と発表された。

 永井一郎といえば、アニメでは前出の磯野波平のほかに、『宇宙戦艦ヤマト』の佐渡酒造、『YAWARA!』の猪熊滋悟郎、『らんま1/2』の八宝斎、『ゲゲゲの鬼太郎』の子泣き爺といった味のあるおじいさんキャラのほか、『機動戦士ガンダム』ではナレーションから、デギンなどネームドキャラ、多数のモブキャラを演じるなど、役にとらわれない幅広い演技を披露。

 実写映画の吹き替えでは『ハリーポッター』シリーズのダンブルドア校長役で知られるほか、バラエティ番組でも数多くのナレーションを務めるなど、老若男女問わず親しまれた、まさに国民的声優、いや“国民的お父さん”の声の持ち主と言っても過言ではない。

 京都大学を卒業後、大手広告代理店の電通に通いながら演劇を学んだ永井は、愛川欽也らとともに劇団三期会に参加。その後、テレビ黎明期の頃より声優業を開始した永井は、老人役を多数好演。その評判からすぐにスケジュールは声優の仕事で埋まることとなったそうだ。

 その後は数々のテレビアニメに出演し、日本の声優の草分け的存在となった永井だが、その一方で声優の地位向上のために、最前線で戦い続けた闘士としての側面もあったことを忘れてはならない。

 かねてより声優の社会的地位の低さ、ギャランティーの低さを問題視していた永井は、1988年に「オール讀物」(文藝春秋社)にて「磯野波平ただいま年収164万円」と題したレポートを上梓。国民的アニメ番組のレギュラー声優にもかかわらず、同時代の生活保護世帯よりも低い収入というあまりにも厳しすぎる声優の現実をつまびらかにし、読者に衝撃を与えた。

 その後、永井は闘争と交渉を行い、より好条件のギャランティを設定できるようになった。2004年8月には、日本アニメーションらを相手取り、声優361人を代表して野沢雅子、内海賢二らと共に「ビデオ化時の声の二次使用料」の支払いを求める訴訟で勝訴している。また若手声優に対しては、技術を磨くよう苦言を呈すこともあり、“声優界の父”として大きな存在感を放っていた。

 永井一郎の逝去は声優界にとって大きな損失となるのは間違いない。しかし、彼が残した魂と遺産もまた計り知れない。彼の思いを受け取った永井チルドレンたちが、今後の声優界を支えていくことだろう。ともあれ、今はただ冥福を祈るばかりである。
(文中敬称略)

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