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『君の名は。』のメガヒットは自主制作の観点でも大快挙! 一方、若手アニメーターの薄給は自主制作の観点でも大問題?

2016.12.31

 CGアニメでも手描きアニメと遜色のない作品は、CGモデルやコマの緻密な調整の末に完成し、その作業はもはや、コマ撮りの制作と近似している。CGで完成したカットの上に描き足すレタッチも珍しくない。デジタル作画でも線の多いキャラクターを何枚も仕上げていくには限界があり、作画崩壊と揶揄されないようにする手段としても有効だ。

 美大・芸大の卒業制作には、一定の割合で毎年コマ撮り作品も見られる。コマ撮りで就職先があるのかと思うかもしれないが、先にコマ撮り以外の会社から内定を得るなどして制作している。作画や背景が上手い上で、コマ撮りも制作してしまうハイスペックな若手が、あえてコマ撮り作品を選んだりしているのは、卒業後に制作する機会がないからという理由もある。

イジー・トルンカ・スタジオにいたこともあるフラン・ブラボー(第5回クリエイターEXPOにて)

 コマ撮りと言えば、チェコや東ヨーロッパ諸国が頭に浮かぶ人も多いかと思う。そうした国々でも、それらコマ撮りの会社が次々と廃業する一方で、CGで制作する会社が増えてきていると聞く。コマ撮りのキャラクター素材には、人形などの立体から切り紙などの平面などがあるが、そうした一連のアナログ作業が高コストになっている背景があるためだ。

 もともと手描きアニメは紙に描いたものをセルに焼き付けて彩色し、それらをコマ撮りと同様に1枚1枚撮影した上での制作だった。後手になっていた作画のデジタルへの移行が話題になっているのは、長期的には紙での作画が高コストになるというのが見えているからでもある。若手アニメーターにとっては、カット袋の郵送費および回収する車の燃料費、紙をスキャンする手間など、還元してほしいと思う部分が多い。

 ここまで記してきて、論点が散漫になっていると感じるかもしれない。しかし作画の工程の諸問題が解決されないまま20年が経過している状況は一筋縄ではいかない。そしてアニメと聞くとテレビシリーズや長編映画の話に集中しがちだが、アニメーション表現や制作に従事する人たちの応用範囲は広く、様々な観点からの考察が必要とされることに変わりはない。
(取材・文/真狩祐志)

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