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『君の名は。』のメガヒットは自主制作の観点でも大快挙! 一方、若手アニメーターの薄給は自主制作の観点でも大問題?

2016.12.31

 現在だとクラウドファンディングがあるものの、自主制作するクリエイターにとって、CWFのような会社からオリジナル作品のDVDをリリースするのは憧れでもある。CWFでも例えば08年以降のショートアニメ『Peeping Life』シリーズ(森りょういち)も自主制作(『EACH LIFE』)が元になっている。アニメファンとは異なる客層の掘り起こしに成功し、DVDも現在まで累計60万枚以上のヒットに結びついた。

 当然ながら定期的に作品をリリースするには、売れ続けなければならない。作品のリリース後は自主制作ではなく商用として、OVAや映画などの扱いになるからだ。売れて予算を増やしてもらえれば、人的リソースを割くだけの余裕も生まれてくる。新海監督もそうしたキャリアの積み上げにより、満を持して偉大な功績を残すことになったのだから感慨深い。

■ハイスペックな自主制作出身クリエイター 分業ではなく得意な工程の兼任も必要


動画:新海監督が『ほしのこえ』10周年で公開したメイキングの一部

 初めて商用でオリジナル作品を制作する自主制作出身クリエイターに対する予算は、場合にもよるが、おおよそテレビシリーズ1話分相当とされている。じっくりと個人レベルで制作することができる額ではある反面、完成まで1、2年を要してしまう難点もある。表向きは個人レベルで高いクオリティーの作品が作れるという触れ込みだが、実のところ、どこまで制作費を圧縮できるのかという費用対効果のフシがなくもない。

 定期的に話題となる若手アニメーターの薄給問題も、制作に際して限られた予算や期間の問題が含まれている。個人レベルで制作するわけではないので、期間内に完成させようと思うと、1人当たりの取り分が減っていく。『ほしのこえ』が話題となった当時、「現場が動揺するから止めてくれ」という声が(商業アニメ制作現場から)あがったように記憶しているが、1人当たりの取り分を増やすように改善できなかったから今の状況があると言える。

 TVアニメシリーズの作品数が多すぎて制作が遅れ、放送が延期となるケースも見られることから、作品数を減らせば解決するのかというとそうでもない。現場の負担が減ったところで、1作品当たりの制作費は変化しないからだ。元請けになるべく争奪戦が展開された『神撃のバハムート GENESIS』(14年)のような、割のよい作品ばかりを期待できない。映画の方が尺が短く予算も多いだけ、まだ制作に集中することができる。

 1人当たりの取り分を増やす方法としては、1つの工程に縛られずに対応できる現場の構築も挙げられている。美大・芸大で本格的にアニメーションを教えるようになって10年が経過し、自主制作で話題となる作品も美大・芸大の学生作品が占めるようになった。得意な作業が複数の工程に跨るハイスペックな若手に対して、あえて1つに絞らせる状況も薄給問題とつながっている。

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