エロゲーよ、萌えているか?

製作費、そして予約特典にまつわるアレコレ……皆大好き、お金のお話!【ぶっちゃけエロゲー界ってどうよ?連載(3)】

2015.11.14

※写真はイメージです。

 さて、エロゲー業界の景気と比例して売り上げはイマイチというのが、前回までの流れであったが、そもそもどうしてそんな状況を招いてしまったのか。
 皆、大好きなお金にまつわるお話を中心に、連載第3回目をお送りする。

―― そもそもこの連載は “エルフがゲーム制作から撤退か!?”という報道があったことを発端としていますけど、アニメ業界では元請けもやっていた制作スタジオ・マングローブが倒産して話題になったりしました。倒産するメーカーも出てきているんですか?

佐藤「あるある。そりゃありますよ。ただエロゲーメーカーの場合、ひっそりと無くなっていくんです」

―― 倒産しても、規模が小さいところが多いからニュースにならないとか?

佐藤「それもありますけど、18禁だからということで、そもそも上場していないところも結構多いんです。上場していれば、倒産の際には帝国データバンクなどで発表されるので、ニュースになったりしますけど」

―― マングローブも帝国データバンクの発表を受けて話題になりましたね。

佐藤「だから、廃業していても気づかなかったりするんです。といっても小規模メーカーは、金策さえできれば倒産しても社長を替えて社名を変えて、雨後のタケノコのようにポコポコと復活できるので、ちゃっかり戻ってきている人もいますけどね。それに法人化するにしても、メインでやっていたクリエーターさんが他に人がいないので、しょうがなく社長をやります、みたいなメーカーが多い」

―― 言われてみれば、老舗のアリスソフトエルフもまだ創業して30年前後。初代エースクリエーターが、まだ現役で社長をやっていたりするという若い業界ですよね。

佐藤「そうですね。経営に行き詰まるとか何かがあって社長が変わったというところはあっても、穏当に代替わりした会社は、まだほとんどないんです」

―― ああ、やっぱりそんな感じなんですね。

佐藤「確かアリスソフトは初代社長のご子息が、順当に跡を継いだと聞いています。でも逆にそれ以外にはあまりないんじゃないかな、そうやって順当に後継者が跡を継いだというメーカーは」

―― 業界屈指の老舗でようやく代替わり。やっぱり若い業界ですね。

佐藤「元々エロゲーというのはクリエーターが寄り集まってできたメーカーが多いので、経営者気質の人が少ないんです。どうしても思想がクリエーター寄りで、トラブルが起きたり、二者択一の決断を迫られた際も、お金の問題よりもクリエーター気質を優先してしまいがちだから、マイナスになりやすい(笑)。だから知らないうちに畳んでいたり、吸収されていたりするケースが目立つのかなと個人的には思うんですけど」

■天井知らずのアニメに比べ、制限ありなゲーム製作費

 

―― エロゲーを一本作るのに、どれぐらい製作費がかかるものなんですか?

佐藤「う~ん……製作費用はアニメみたいに1作品でいくらぐらいという、はっきりとした目安というのはないですね。メーカーの販売目標本数やペイラインを知ることができれば、どれくらいの製作費なのかはなんとなく予測はつきますけど」

―― では、最低これぐらいあれば形は作れるというレベルだとどうですか?

佐藤「すごく節約して数百万円ぐらいで制作できることもあるけど、フルパッケージ(8,800円)の作品を作ろうと思ったら、最低でも1,000万は必要なんじゃないかな。今の流行のエロゲーに求められている“必須項目”を最低限クリアするためには。フルボイスで主題歌もあって、となると足りないくらい。Hシーンにアニメっぽい動きのあるパートも入れたいだろうし、そういう演出や技術を取り入れると、すぐ数千万ぐらいまで膨れ上がってしまう」

―― 流行のエロゲーらしくするには、どうしてもそれぐらいかかってしまうと。

佐藤「そう。でも、結局のところ、一番かさむのは人件費だと思うんです。CG一枚当たりいくらで、合計で○万円というところまでは計算しやすいんですけど、修正を待ってもらったり、逆に急ぎで仕上げてもらう必要があって、特急料金がかかる場合もある。シナリオにしても、リテイクをどこまでライターさんはやってくれるのか。そしてそのライターさんはフリーか社員なのかで、また違ってくるじゃないですか。そこは、それぞれのメーカーやゲームごとで違うだろうし、外部の人間には製作費の詳細はわからないです」

―― 業界のうわさみたいなレベルで結構なので、すごい金額になったゲームとかあるものですか? 例えば一般TVアニメだと1クール数億円ですが、大作映画だと数十億円かかったり、コンシューマーのゲームでもとてつもない額のがありますし。

佐藤「う~ん……アニメやコンシューマーであれば、動画枚数や演出、CGにいくらでも手をかけられるし、逆にいくらでも手を抜けるじゃないですか。だからジブリだとかディズニーなどの映画は時間もかかっているし、手間もかかっているから、天井知らずに総製作費が上がっていく。でもエロゲーの場合は、DVDやCDのデータ容量的に上限が決まっていますから、最初にCGが何枚、テキストがこれぐらいと、内容をある程度まで最初に決めてしまうので、アニメほどには金額が跳ね上がったりはしないのではと思います。まぁ、最初に決めた制限ありきで、ゲームとしての内容を狭めてしまうのもどうかなと思いますけどね。納期に間に合わなくなって、Hシーンを一つ削ってなんとか間に合わせた、というような話もよく聞きますし」

―― ちなみに、アニメは何かとアニメーターさんの薄給が話題になりますけど、エロゲーの人たちはどんなものなんですか?

佐藤「クリエーターの人は外注にしても社内スタッフにしても、仕事の対価でもらっているはずなので、薄給ではないでしょうね。ただ、未払いとなって逃げ回るメーカーがまれに現れるので、報酬がゼロになってしまうこともあるようですけど……。薄給と聞くのは社員の方たちですね。売りになるクリエーターや、質を保つための彩色系スタッフなどは、経営者からすると逃げられると困るけど、社内の他スタッフはエロゲーが好きで支えてくれている人が多いですから。耳にした範囲ですけど、最低ラインだと月15万なかった方もいたようです」

■某有名ショップの特典強要がひどい件

 

―― さて、今回は“エロゲーとお金”をテーマにお話を聞いてきましたが、さらに何か面白いお金の話があったりしませんか?

佐藤「特典でしょうか。ゲームを予約したり購入すると、大型ショップやチェーン展開しているようなショップでは、ショップオリジナルの特典をもらえることが多いですよね。これに関して、某ショップの特典がひどいと評判で」

―― それは飛び抜けて出来が悪いということですか?

佐藤「いや、お金をケチって特典の質が悪いという話ではなく、特典の製作費用に関して某ショップがメーカー側に無理を言っているそうです。というのも、そのショップのオリジナル特典というのは、製作費用をゲームメーカーが負担しているんで」

―― イラスト描き下ろしであれば描き手さんへの原稿料、あとは印刷代や加工費などですね。

佐藤「某ショップはさらに、ミニドラマを収録したCDなどを特典としてつけるように要求したりするんです。CDのプレスやスタジオ代などそれなりに費用がかかるんですが、もちろんショップ側は一銭も払わない。描き下ろしポスターやタペストリーなど、定番の特典をつけた上でですよ」

―― それぐらいしないと、うちで売ってやらないぞと。アニメメーカーやスタジオが、アニメイトには逆らえないというのと一緒ですね。

佐藤「一緒だと思います。エロゲーにもショップはいろいろありますけど、そこが一番売ってくれるから、メーカー側としては逆らえないんです。それをいいことに、かなり無理を強いる。近々発売予定になっているゲームを何本か並べて、各ショップの予約特典を見比べるとすぐわかると思いますけど、ほぼ間違いなくそのショップの特典が一番豪華なものになっています」

―― それはひどい話だなぁ。

佐藤「売り上げへの貢献度がスゴイから、皆あきらめつつあるんですけどね。さらにヒドいのは、メーカーはイラストを使ってよくグッズを作るじゃないですか」

―― クリアファイルなどを作って、イベント時に限定で販売したり、配布したりしていますね。

佐藤「そうそう。で、その某ショップの人が、メーカーが新しいグッズを作った、という事実を知らなかったりすると、メーカーの人を呼んで怒ったりするの(笑)」

―― 何それ。ショップは関係ないじゃないですか!

佐藤「でもね、力関係がそうなっているから。なぜ連絡しなかったのかと小言を言われたり、あと同じものをうちの店頭でも売らせろとも迫ったりもするのだとか(笑)。業界中に伝わる風のうわさで、真偽はわかりませんが、相当な殿様商売をやっていること自体は本当です」

―― アニメイトは影響力大きいけど、メーカーや出版の人間には、基本的に腰が低い人が多かったけどなぁ。

佐藤「ああ、それは商売が上手なんですよ、アニメイトが。でもそのショップはね、自分が偉いということを知っているし、それを態度に出すし、隠そうとしない。流通の人なども、“あの人を怒らせると面倒くさいですよ”って、俺らに耳打ちしてくれるぐらい業界では鳴り響いていますからね(笑)」

 個人の問題なのか、ショップとしての体制が問題なのかはわからんが、とにかくひどい話だ。さて最終回となる次回は、エロゲー業界の展望について、これまたざっくりと暗いお話を語る。お楽しみに!

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