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制作秘話からアニメ界の新潮流までを直撃! 神風動画によるオリジナルアニメ『HOME-PATO THE MOVIE』の裏側に迫る

2015.06.18

■CGのなめらかさと“アニメ感”を融合させた画作り

コマを抜くことで勢いを感じさせるドリフトシーン。©TOKYO SMART DRIVER

――リアルさの一方で、「ドドド」といった書き文字やグラフィカルな煙など、“神風動画らしい”とも感じました。 青山 コンテや動きは僕が作って、アニメっぽく“神風シェ―ダ―(陰影処理)”にするのは、水崎さんに完全にお任せでしたね。 水崎 青山さんの特徴は、戦闘機とか車のフェチ感や魅せ方、カメラワーク。それと、質感や光。今回、質感や光については、こちら(神風動画)を活かす形になりましたが。 ――車の動きが、CGなのにCGのように見えなかったことにも驚きました。  少し踏み込みますが、映像のコマは基本的に1秒間24コマ(フルアニメーション)で、日本で流れている普通のテレビアニメなどは1秒間12コマや8コマといった、いわゆる“リミテッド・アニメ―ション”。CGだと当然24コマ全部に画があるので、中には“なめらか過ぎて”違和感を覚える作品もあります。でも、『HOME-PATO THE MOVIE』は動きがすごく自然でした。 水崎 実際、最後に車がドリフトして去っていくところは、24コマからコマを捨てたりはしてますね。12コマ落としたり。そのぎこちなさが、力が溜まっているように見えて、むしろ良いのかも。  24コマの場合、CGだと、キーフレームの間はコンピューターが勝手に作ってくれる。そうすると、コンピューターの考えた画が、アニメーターが作った画の倍あることになってしまう。つまり、“アニメーターが責任を持つ密度”が薄くなっちゃう。でも、青山さんは24コマに責任を持ってくださるんですよね。 ――知らない読者のために簡単に説明すると、キーフレームはセルアニメでいうところの“原画”。このキーフレーム(原画)を作ってから、セルアニメでは間に“動画”を入れますが、CGではキーフレーム間の画(動画)をコンピュータが数理的に補完する、ということになります。 青山 「どこで止めてもちゃんと見えるように」というのは心がけてます。  神風動画との仕事では、普段よりもキ―フレームを多くして、ちょっと手作りっぽくしてる時もありますし、少しノイズ残したりとか、あえてアナログ感を入れてます。 水崎 キ―フレームが少ない時の、スッと飛んでいく放物線のような気持ち良さも、青山さんの持ち味なので、「神風動画みたいにしてください」と押しつけるつもりはなかったんですが……。キーフレームを多めにしてくれてるとは思わなかった(笑)。 青山 (笑)。車が走っているところはわりと伸びやかさを重視して、自分としては慣性に従った動きを常に大事にしています。そこを崩さない範囲で、プラスしてアニメに寄せた要素を入れたりするんです。神風動画はコマを抜く作風が多いと思うんですが、僕とやる時はなめらかさを活かしてくれるので、そういったバランスを見ながら、ちょうどいい落としどころを考えました。 水崎 本来のCGだと、質感やハイライト、影やグラデーションといった情報量を、神風動画の作品ではセル画のようにして省略している。動きの情報量が多いのに、画を省略している(情報量が少ない)というシーソーのバランスがとれてない場合、ちょっと気持ち悪い画になるんだと思います。  だから、青山さんにも“アニメ感”を意識していただいたことで、『HOME-PATO THE MOVIE』はバランスがとれているのかも。  もちろん「24コマがNGで、コマを抜いたものが正解」だとは思わないです。その人の魂と心が入っていれば、24コマでも正解だと思っています。だから、アニメらしい質感とかよりは、魂が入っているかどうか。青山さんを作品にお呼びしているのは、そういうところだと思います。

速度感など、車好きならではのこだわりも随所に。©TOKYO SMART DRIVER

――「慣性を表現する」なんてところも、ドライバーならではのこだわりでしょうか。 水崎 そうですね。“それっぽい動き”ではなくて、実際にハンドルを握ってるからこそ自信を持って出せるものなのかな。 青山 『HOME-PATO THE MOVIE』の中で、パトカーが追いついて隣に横づけしてくるカットの速度感とかもリアルにしてます。あまり車に乗らないアニメーターだと、速度を速く動かし過ぎて、重さのない車に見えちゃったりすることが多いんです。 水崎 (そのシーンを見ながら)この場面、ブレーキランプ点ければ良かったかな。いや、マニュアルだからエンジンブレーキ……? 見れば見るほど、「ここはこうすれば良かった」とか、まだちょっと出てきますね(笑)。

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