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「第15回広島国際アニメーションフェスティバル」【番外編】

「日本人のほうにギャップを感じる」『日本のアニメは何がすごいのか』著者・津堅信之に聞いた“アニメ”と“アニメーション”区別の重要性 

2014.09.20

 最後に今回、第15回広島国際アニメーションフェスティバルのコンペティションに日本の作品が入らなかったことについても、所感を聞いた。

津堅「僕は、フェスティバル設立から30年だし、空気を読んでほしかった。国際選考委員の1人になぜ日本の作品が入らなかったのか聞いたけど、『とにかく制作者や制作国をブラックアウト(秘匿)されていて、日本の作品かどうかわからない』とか『審査したら結果的に日本の作品が入らなかった』って言うけど、そんなはずはない。

 例えば、上映されたフィルムで東京藝術大学のロゴ外す? 外さないでしょう? クレジットなどから、日本の作品だとわかるはず。全部が日本の作品とわかるかどうかは別として、ブラックアウトされてるからわからないってのは違うと思う。やっぱり日本でやるんだから、日本の作品を入れたいでしょう。第12回(08年)に日本の作品がすごく少なくて、久里(洋二)さんが『もっと入れろ』って言ったことがあるみたいだけど……。だからといって、シード枠を作って入れるとかするわけにはいかないし、これは日本のレベルが低いっていうのとは違うと思う」

 久里さんは、1962年に『人間動物園』で日本初のアヌシー受賞者となったアニメーション作家で、一般には、往年のテレビ番組『11PM』のアニメーションで知られている。第1回(1985年)に各賞を決定する国際審査委員を務め、第11回(06年)と今回のキービジュアルを担当と、広島とも縁が深い。今回も久里さんは、コンペティションに日本の作品が0という状況に対し、苦言を呈していた。過去にない異例の事態だから、当然だろう。

 ちなみに第12回(08年)にノミネートされたのはグランプリの『カフカ 田舎医者』(山村浩二)、ヒロシマ賞と観客賞の『つみきのいえ』(加藤久仁生)、『まよなかのいちご』(竹内良貴)だった。前者2作品が“アニメーション”であるのに対し、後者が“アニメ”であったことでも注目された(竹内さんは当時から新海誠監督作品のスタッフとして活躍している)。

津堅「今回、コンペティションに入った作品を見てたら全体的に暗いでしょ? あれは確実に国際選考委員の考えが入ったと思うけど、ショートギャグとかファンタジーとかSFとかの作品が必ず毎回入っているのに、そういうのがほぼない。それが今回、トータル59作品の特徴になった。今年は第一次世界大戦から100周年で、ヨーロッパでそれをモチーフとした作品がたくさん作られたというのを受けた時に、日本の作家たちが、そういった(第一次世界大戦100周年を意識した)作品を作り難い気質はあるかもしれない。それでも、1本も入らなかったのは返す返す残念で、盛り上がらない。祭なんだから盛り上げようって気はした」

 本稿で“アニメ”と“アニメーション”の違いが気になった読者は、是非とも『日本のアニメは何がすごいのか-世界が惹かれた理由』を手にとってみてほしい。海外だけでなく、日本のアニメーションをめぐる実情を知るには“アニメ”と“アニメーション”の違いを知らねば始まらない。そして、記述の際にも“アニメ”と“アニメーション”の書き分けを意識して心がけると、そうした実情に対する理解を示せるのではないだろうか。
(取材・文/真狩祐志)

■『日本のアニメは何がすごいのか-世界が惹かれた理由』
http://www.s-book.net/plsql/slib_detail?isbn=9784396113599

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