「第15回広島国際アニメーションフェスティバル」【Part3】

ピクサーの新作短編『LAVA』の主人公は“火山”!! いち早くワールドプレミアとなった第15回広島国際アニメーションフェスティバル

2014.09.02

©2014 Disney・Pixar

 第15回広島国際アニメーションフェスティバルでは、ディズニーやピクサーの新作短編が披露されるのも恒例となっている。会期2日目の8月22日には、ピクサーから『LAVA』(邦題『南の島のラブソング』)のワールドプレミア(世界初公開)とセミナーが行われた。

 ディズニーやピクサーの短編は長編と併映されており、毎回楽しみにしている人も多いだろう。前回2012年(第14回)では、ディズニーの『Paperman』(邦題『紙ひこうき』)のジャパンプレミア(日本初公開)とセミナーが行われた。『Paperman』は、2Dと3DCGとの融合で画期的な技術を独自開発していたことやアカデミー賞の受賞などで国内外を問わず話題をさらっていた。併映の長編は『Wreck-It Ralph』(邦題『シュガー・ラッシュ』)だったので、覚えている人もいるだろう。

 先に記しておくと、今年10月の第27回東京国際映画祭のオープニング作品としてジャパンプレミアとなる長編『Big Hero 6』(邦題『ベイマックス』)の併映は、『Feast』(邦題未定)が予定されている。こちらの『Feast』は、6月にフランスで開催されたアヌシー国際アニメーションフェスティバルでワールドプレミアとなっていた。ちなみに昨年のアヌシーにおけるワールドプレミアは、『Get A Horse!』(邦題『ミッキーのミニー救出大作戦』)。こちらはメガヒットした長編『Frozen』(邦題『アナと雪の女王』)との併映なので、日本でも相応の人が見ていることになる。

『LAVA』セミナー登壇者は、監督・脚本のジェームズ・フォード・マーフィーさんとプロデューサーのアンドレア・ウォーレンさん。この火山を主人公にした『LAVA』の制作は、マーフィーさんが25年前にハワイ島(ビッグ・アイランド)に新婚旅行で訪れた際、活火山とハワイの音楽に魅せられたことに端を発しているそうだ(LAVAは邦訳すると“溶岩”の意)。ハワイ島のコナ(=コーヒーの銘柄で有名な地域)にあるショッピングモールで5つの火山があるジオラマを見て、ロイヒ海底火山の存在に気づいたという。ロイヒ海底火山が10万年後にハワイ島とつながると書かれていたことから、火山の一生を調べ、その活動が8500万年に及ぶことを知ったと述懐した(ちなみに日本の領海では、昨年より小笠原諸島の西之島が活発な活動を続けているのでタイムリーな作品とも言える)。

 マーフィーさんは社内で『LAVA』の企画をジョン・ラセターさんに売り込む際、彫刻や絵でプレゼンするだけでなく、ウクレレを弾きながら劇中の歌まで披露した経緯も明らかにした。ストーリーに関しては、主人公・UKUが巨大な山だったため、キャラクターとして伝えるのに限界があり、制作プロセスに心配があったとも語る。ラセターさんからは「雲はともかく、火山がイルカと一緒に泳ぐのは気味が悪い」と、主人公を共感できるものにしてほしいとの返事があったようである。このほか、絵コンテにマグマ溜まりも描いていたが、作品をどのようにしたいのかわかりやすくするために、最初に持っていたアイデアを捨てなければならないという試行錯誤も経ていた。アイデアを活かすためのカメラワークについても、世界観を損ねてしまわないよう、実際のヘリコプターの空撮が本物に見える理由を探ったりもしている。

 最後に、UKUの声も担当したクアナ・トレス・カヘレさんが登場。本作の主題歌やハワイアンソングを披露するなどして、会場を盛り上げた。なお、気になる『LAVA』の併映長編は、2015年公開の『Inside Out』(邦題未定)が予定されている。アメリカ本国では同年6月の公開とのことで、日本での本公開も楽しみに待ちたい。
(取材・文/真狩祐志)

■Your First Look at Pixar’s Lava In Motion
http://blogs.disney.com/insider/2014/08/28/your-first-look-at-pixars-lava-in-motion/
■広島国際アニメーションフェスティバル
http://hiroanim.org/

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