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巨大ロボットがダイナミックに大暴れ! 幻の韓国アニメ『テコンV』が日本公開

2013.09.01

カン 『テコンV』シリーズは韓国のオリジナルアニメということで、夏休みや冬休みにクラスごとに小学校全員で映画館へ観にいきました。韓国の小学生たちの間で大変な人気がありました。当時は子どもだったこともあり、テコンVという巨大ロボットが本当に開発され、韓国軍が保持しているものと思い込んでいたんです。韓国の巨大な競技場の地下にテコンVは格納されており、グランドが2つに分かれて、テコンVが出動するんだと子どもたちの間で噂していました(笑)。

 韓国では98年から日本の大衆文化の開放が段階的に始まったが、それ以前の70~80年代の韓国のテレビ事情はどうだったのだろうか。

カン ボクが子どもの頃、テレビはカラー化されていましたが、まだ終日放送ではありませんでした。朝の放送の後、昼間は放送がなく、夕方4時30分か5時くらいからテレビ放映が再開されたんです。まず韓国の国歌が流れ、ニュースをひとつはさみ、それから子ども向きのアニメ番組が始まりました。韓国の子どもたちは国歌を口ずさみながらアニメが始まるのを待っていたんです。『新造人間キャシャーン』『マッハGoGoGo』、手塚治虫先生の『鉄腕アトム』『リボンの騎士』、それに『銀河鉄道999』『千年女王』といったアニメが韓国語に吹き替えられて放映されていました。『宇宙戦艦ヤマト』も別の題名(『戦艦V号』)で放映されています。日本製アニメとは、その頃はまったく気づきませんでしたね。でも、中学に進学すると、次第にアニメは観なくなりました。多分、韓国の子どもの多くはそうじゃないですか。その後、ボクは高校、大学、兵役を経て、93年から日本に来たんですが、『マジンガーZ』を観たときには驚きました。「あれ、テコンVにそっくりなロボットが日本にもあるぞ」と(苦笑)。『マジンガーZ』が先に放映されていたことは後から知りました。ですから、自分のように映像関係の仕事をしている韓国出身の人間にとって、『テコンV』は懐かしい気持ちになるのと同時に、非常に複雑な思いを抱く作品なんです。

テコンVのパイロット・フンに想いを寄せる美少女アンドロイドのメリー。”アカ帝国”との板挟みになる彼女の健気な行動にホロリとさせられる。

 韓流ブームの先駆けとなった『冬のソナタ』の脚本家は、やはり子どもの頃に韓国で放映された『キャンディ・キャンディ』(76~79年/テレビ朝日系)が好きだったという。日本と韓国の文化は国境を越え、さまざまな形で影響し合ってきたようだ。最後に『テコンV』を観る際の楽しみ方を大畑氏に伝授してもらおう。

大畑 仕事で韓国に行った際に、韓国のスタッフたちから聞いたのですが、韓国の男性はアニメや漫画が好きでも、兵役に行くことで否応なく子ども時代に別れを告げることになるようです。日本のように30歳や40歳を過ぎてもキャラクター商品を集め、アニメや漫画に熱中しているほうが、他国の人から見れば特殊なことに見えるのかも知れない。ですが、空想の世界で遊ぶことができなくなったら、人間は心の余裕をなくし、ただ生活に追われるだけの人生になってしまうのではないでしょうか。韓国アニメを鑑賞する際は、多少理解できない部分があっても自分の心の中で作品世界を妄想し、補完しながら日本アニメとのギャップを楽しむことです。いわば、観客参加型の作品です。ですから、『テコンV』を現代の日本の劇場で楽しむということは、とても幸せな体験になると思いますね。
(取材・文=長野辰次/日刊サイゾー 2010.08.06既出)

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