エロマンガでは、すでに電子書籍がメインに……マンガ単行本の「紙と同時発売」は売上を増やすのか

2018.06.30

※イメージ画像

 紙の本とその電子書籍版の発売日がズレることは、売上にマイナスを及ぼすのか。マンガ家の問題提起が注目を集めている。

 この問題を提起しているのは『映像研には手を出すな!』(小学館)などで知られる大童澄瞳氏だ。

 大童氏は自身のTwitterで、根拠はないとしながらも「電子版と紙版の販売日ずらしたところで、書店にも出版社にも作者にもなんの意味もない。むしろ悪い影響しかない。」と発言。「電書読者に発売日の油断やミスを誘う事で起きるマイナス効果が大きい」のではないかと記している。

 最近、マンガに限っても電子書籍の需要は伸びている。電子書籍の大手イーブックスなどでは「紙と同時発売」と記された新刊も、当たり前の存在だ。それでもなお、電子書籍版は紙の単行本が出てしばらくしてからという作品も多い。このブランクを生んでいる要因は何か?

「出版社内でも同時に出すか、電子書籍版はしばらく時間を置くか作品によって対応はさまざまです。読者の傾向から見て、紙の単行本を求めるほうが多いのではないかと判断できる場合、電子書籍版を遅らせることが多いのです。ただ、明確な根拠となるデータがあるわけではありません」(編集者)

 判断材料はさまざまだが「作品によっては、紙でないと読みづらい場合がある」「巻数が増えた作品は本棚を圧迫するため電子版で揃えている人が多い」といった事例をもとに考えているという。

 ただ、これは一般向けマンガでの話。18禁の場合は事情がまったく異なる。18禁では、もう「紙よりも電子書籍」が当たり前になりつつあるのだ。

「すでに、エロマンガの市場は電子書籍が紙よりも増えています。紙で出版するのは、電子で売上がよかったものだけという方針の出版社も多いんです」

 そう話すのは、エロマンガ大手の編集者。エロマンガの場合、もはや紙の単行本は秋葉原などの専門書店が売上の大半を占めている状況。紙のほうはコレクターアイテム化しており、一般では電子書籍のオマケのようになっているのである。

「エロマンガの場合、実用重視ですから、いつでもどこでも買うことができる電子書籍版の需要が高いのは当然。それに作家ごとに、単話で買うこともできますし」(同)

 ネットで発売を知った時、すぐに買えるという利点が電子書籍にはある。それは、エロマンガに限らず、一般向け作品でも変わらない。読者が手に取る機会を増やすためにも、もっと「紙と同時発売」が増えてもよいのかもしれない。
(文=特別取材班)

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