【アニメレビュー】ヒロイン・おまさが切ない&ゲストが格好いい! 男と女の複雑な想いが錯綜した『鬼平』最終話「狐火」

2017.04.04

テレビ東京「あにてれ」、『鬼平』公式サイトより。

「なぜ今、鬼平?」「平蔵がイケメン&スタイリッシュすぎる」「ちょんまげを結ってない」などなど、放送前は悪態をつきまくっていたが、放送開始後は重厚な池波正太郎の原作をきっちり30分枠に収める脚本と、重厚なキャスト陣による渋い演技、実写では表現が難しいであろう剣戟アクション、格好いい田中公平音楽の魅力に手の平を高速で返し、しつこくレビューしてきたTVアニメ『鬼平』(テレビ東京ほか)。最終十三話「狐火」も紹介してみたい。

 冒頭は若き日のおまさと若い盗賊(演:山寺宏一)の悲しい別れのシーンから。一味の中での色恋はご法度と駆け去る盗賊、見送るおまさ……。

 OPを挟んだ後はいきなり無残な盗人たちによる“畜生働き”。犯行現場に盗人たちはこれ見よがしに「狐火札」を残していく。盗人一味「狐火」の先代は、盗人三か条「殺さず、犯さず、貧しきものより奪わず」を守る本格の盗人だったはず。引き継いだ二代目が方針を転換したのだろうか? すると、長谷川平蔵の密偵を務めるおまさは「二代目はこんなことをしない!」と言い張る。

 冒頭で描かれていた、若いころのおまさが加わっていた盗人一味が「狐火」であり、いい感じになっていながら別れてしまっていた相手こそ、先代の息子であり二代目を継いだはずの又太郎だったのだ。

 第四話以来のおまさメイン回が最終話にして到来! かつて成就できなかった恋の切なさを秘めつつ、かつての恋人を信じたいような裏切られるのが怖いようでもある……という複雑な心境のおまさを演じる朴●美さん(※●は王へんに路)が実に色っぽかったなと思いました(小学生並の感想)。幼いころは平蔵に初恋してみたり、おまさは原作小説でもTVドラマでもアニメでも耐え忍ぶ恋がよく似合う大人な女性だなと改めて思う。

 さて、必死の捜索により「二代目狐火」の手がかりを得たおまさ。無残な畜生働きは、先代のもう一人の息子・文吉(演:矢尾一樹)が犯したものと判明する。兄弟による跡目争いに巻き込まれたおまさを、間一髪のところで又太郎が救いだす! 久しぶりの再会に、かつて恋人同士だった二人は肌を合わせるのだった――最終回だからといって、主要キャラたちの顔見せなんてことはせずに、おまさを中心にじっくり描いてくれたので、彼女の感情の動きをしっかり追えたのもポイント高いところ。

 その後、粂八や彦十の活躍で又太郎とおまさ、そして「狐火」が集結したところへ駆けつけた火盗改。最後まで「兄を越えたかった」という文吉を、又太郎は自ら葬る。火盗改の密偵としておまさは、又太郎との別離を覚悟の上で彼を「事件解決に協力してくれたただの商人」とかばい、おそらく平蔵も承知の上でおまさの弁明を承知し、一件落着と相成ったのだった――。

 せっかくのおまさメイン回なのにサービスシーンが少ないよ! と正直思ったが、尺が短すぎる。これはしょうがない。というのも、この「狐火」は原作小説でも人気があるエピソードだが、実は結構ボリュームがあり、“松竹創業100周年記念作品”として制作された『鬼平犯科帳 劇場版』(1995年)で、取り上げられたエピソードだったりもするのだ(他エピソードも肉付けされていたが)。

 30分で収めるのは至難の業だっただろうと思う。ぶっちゃけかなりカットされているし、特にラストは大分違うのだが、アニメでは大滝の五郎蔵が登場していないこと、TVアニメの続編がもしあればと考えた場合、この展開ならおまさがすぐに再登場できることを考えれば、逆によく考えられた構成・展開だったようにも思う。

 というわけで、我ながらあまりの手の平返しぶりに、手首が捻り切れてしまわないか心配になるほどだが、続編制作にすごく期待したいし、制作側にもそういう気持ちがあるんだろうなと感じられた最終回であった。Blu-ray、DVDはあまりアレかもしれないが、普段アニメを観ない年配の時代劇ファンでも楽しんで視聴できる作品であった。原作はたんまりあることだし、いつか続報が発表されることを楽しみにしたい。
(文・馬場ゆうすけ)

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