【アニメレビュー】ついに明かされた若き日の鬼平、そして長谷川家の面倒くさい事情とは!?『鬼平』第九話「わかれ道」

2017.03.09

テレビ東京「あにてれ」、『鬼平』公式サイトより

 6日深夜放送の第九話「わかれ道」で、主人公・長谷川平蔵の若き日、そしてほんのちょっとしたキッカケで人生がわかれてしまうという切ない物語を描いたTVアニメ『鬼平』。

 実はこの第九話は、次回の第十話「泥鰌の和助始末」の前編にあたるエピソード。折り返し地点を過ぎ、いよいよ残り放送話数も少なくなってきたところで、初の二話構成の大きな物語を仕込んできたのだ。今週も張り切って紹介してみたい。

 息子・辰蔵が珍しく剣術の稽古に励んでいる姿を見て、自身の若いころに思いを馳せる平蔵。岸井左馬之助などとともに、剣術に夢中になっていたあるとき、高杉道場へ松岡重兵衛という男が乗り込んでくる。松岡の腕前は、“銕三郎”と名乗っていた平蔵よりもはるかに上。叩きのめされた平蔵は松岡に心酔し、ますます稽古に励むように。

 ところがある日、久しぶりに実家へ戻った平蔵は継母で父の正妻・波津から「妾腹の子」と罵られ、さらに自分がいるにも関わらず養子をとると告げられ、「こうなったら、落ちるところまで落ちてやれ」と自暴自棄に。誘われた盗みの助っ人話に乗っかってしまうのだが――というのが大まかなストーリー。

 いいところのお坊ちゃん(=旗本の息子)の平蔵が、“本所の銕”としてそこらのチンピラも恐れるほど、ブイブイ言わせていたのか? そこに当時の武家社会でありがちな“お家の事情”があった……というところを、原作小説『鬼平犯科帳』(作:池波正太郎/文藝春秋)やTVドラマシリーズを知らない、今回のアニメから入った人にもわかりやすく、そして短い時間にまとめて説明できていて、巧みな構成だったと思う。

 念のため説明しておくと、平蔵の父・長谷川宣雄はお園という女性と結婚するつもりで結ばれ、平蔵も誕生した。ところが宣雄の兄=長谷川家の跡取りが若くして亡くなってしまう。お家断絶を防ぐため、宣雄は亡くなった兄の娘で姪にあたる波津と断腸の思いで夫婦に。平蔵は幼きころから、義理の母で叔母にもあたる波津から辛くあたられ、長谷川家を飛び出すのだった。

 ちなみに妻の久栄にも、なかなか面倒くさい過去があったり、後に、平蔵に異母妹(宣雄の隠し子)がいることが後に発覚したりと、面倒くさい事情を意外とたくさん抱えている長谷川家。

 まだ髪の毛が黒かったり、やたら背が低く見えるのは加齢のせいだと思っていたのに、昔からあの身長だったり、平蔵に悪い儲け話を持ち込んだ彦十の姿に驚かされたが、さらに驚いたのはその後。仕事を終え、逃亡を図る盗人たちのために船を出そうとした平蔵たちの前に現れた盗人は、なんと松岡重兵衛だったのだ!

 平蔵を殴りつけた松岡は、「お前は……お前は俺みたいになるんじゃねぇ!」と涙ながらに言い放ち、去っていく。現在の平蔵は久栄に「あの時松岡先生がいなかったら今の火付盗賊改方・長谷川平蔵はいなかったかもしれんとな」とつぶやく。

 第七話の「瓶割り小僧」のときにも似た、誰かのちょっとしたことがキッカケで人生が大きく変わってしまうということを、改めて感じさせてくれるエピソードだ。そこには松岡が平蔵に、そして平蔵が辰蔵に「先生に恥をかかせる真似だけはするな。それがお前の一線ぞ」と言い聞かせたように、親子が通う高杉道場の高杉先生の存在も大きいのだろう。

 さて前述のとおり、今回の「わかれ道」は次回の第十話「泥鰌の和助始末」と対になっているエピソード。「泥鰌の和助始末」はTVドラマでもスペシャル版で放送されたように、数ある『鬼平』のエピソードの中でも、大掛かりで著名なエピソードだ。この第九話を復習しつつ、楽しみに待ちたい。
(文・馬場ゆうすけ)

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