『カーライフ・カーセックス』(弥美津ヒロ)公道レースマンガか?いや、エロマンガか??

2016.10.26

 車モノのマンガといえば、今でも思い出すのが古典的名作である、池沢さとし『サーキットの狼』(集英社)。熱いレースとは裏腹な登場するヒロインたちの、ちょっと「発展家」な感じが印象に残っている作品である。

 弥美津ヒロ『カーライフ カーセックス』(ティーアイネット)は、池沢作品以来の車モノでありがちなナンパ要素を、極限まで拡大した作品である。

 一応、18禁作品だし、エロいシーンもちゃんとソソるのだが、そんなところに注目している場合じゃないのが、この作品なのだ!

 なんでそんなことになっているかといえば、計4作品が収録されている「頭文字M」シリーズが原因である。

 どう考えても、某公道最速な作品をパロっているタイトルである。というか、ほとんどまんまである。

 シリーズのうち3作品は、峠を攻めている姉・美奈子と、妹の蜜子をヒロインに据えた作品だ。

 どういうシチュエーションなのか、合コンの後に酔っ払ってる状態で美奈子の助手席に座っていた蜜子は、案の定ダウン。そんな妹を美奈子は、競っていたスープラの男・崇に押しつけて「走り足りない」と去っていってしまう。

 これがきっかけで2人は付き合うようになるのだが、ノルマシーンはこなしつつも、いろいろとオカシイ。

 まず、この姉妹の職業が整備士というところもアレなのだが、2人とも単なる整備士ではない。美奈子は走り屋だし、蜜子は「超」がつくほどの車バカなのである。

 のっけから、車マンガそのものな大ゴマでかっこよく車を描いた上で、こんなセリフが続く。

「この子のセッティングについてくるなんてね」
「は……速い!」
「腕もいいけど、車が抜群にいい!」
「ついていくのがやっとだ……」
「ドライバー……そして、メカニック……」

 とにかく、エロマンガとは思えない本気度で描かれる車たち。そして、いざエロシーンになると、そこでも「このマンガのテーマは車」であることを際立たせるためのアイデアがどんどん投入される。

「いきなり抱きつかれたら心臓がエンストしてしまいます」
「半クラッチからでいいですか」
「私の子宮、満タンにしてもらっていいですか」

 こんな調子で、合間合間に車への惜しみない愛を語りながら、イチャラブセックスが続くのである。

 車の描き込みが異常なのだが、その一方であらゆる描写が細かい。とりわけ、処女だった蜜子がはじめて男と抱き合ったときに「タバコとコーヒーの匂い」というセリフを吐くこと。これがなんとも味を出している。

 実用を忘れて、車で走り出したくなる作品だ。
(文=ピーラー・ホラ)

※画像の処理は編集部によるもの

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