『たとえ灰になっても』(鬼八頭かかし) 女体化どころかリョナまであるよ!
2016.08.08
単に表紙のゴスロリっ娘がヒロインなんだろうなあと思って買ったら……TSFにリョナまであるヒドすぎる作品でした。
この、鬼八頭かかし『たとえ灰になっても』(スクウェア・エニックス)は、いろいろと展開が読めない作品である。鬼八頭氏は「まんがタイムきらら」(芳文社)などでも連載をしていた、パンチラで眼福させてくれるマンガ家だと記憶していたのだが、人生でなにか転機でもあったのか。いやいや、実はこちらが本性だったのだろう。
物語の主人公・四宮良真のたった一人の妹は難病に苦しんでいた。そんな妹を救うために必要な医療費は10億円。そんな彼の背後に突如姿を現した黒い衣装のナース。彼女は「誰かを殺して奪ってみるかい」とささやき「ゲェム」のチケットを渡したのである。
イタズラかと思い、半信半疑のままチケットを手にしていた良真。そこへ突如飛び込んできたトラックによって、彼は四肢を粉砕されて死亡してしまうのであった。
展開早ッ!
見開きで描かれる内臓どころか、眼球までもが飛び散っている主人公死亡シーンまで、わずか14ページである。
そして、気がつくと良真は見知らぬ部屋の中にいた。
なぜか、制服を着た黒髪ロング+巨乳の女の姿となって……。
いや、実をいうとここまで「よくわからんマンガだなあ。駄作か?」と思っていたのですが、この展開は意外すぎた。おそらくは、鬼八頭氏が「男なんて描きたくねーよ」と思って、こんな展開になったんじゃないかと思うのだけれど、急に「これは、いい作品だ」と思ったわけである。
さて、そこに集められていたのは同じくワケありで大金を必要とする者たち。いずれも、元は男性なのかも知れないが、姿は美少女となって集められていた。
そして、姿を現した黒い天使・クロエルは信じられない札束の山を見せ、彼女ら(彼ら)をゲェムと誘うのだ。
ゲェムのルールは極めて簡単。サイコロを使った丁半博打で権利を手に入れ、相手の話した内容が嘘か本当かを見破るもの。そこに付け加えられたルールとして、本当の名前が知られてはいけないというものがある。これを破った者は即座に死亡してしまうのだ。このシーンでも、ルールを聞く前に名前を言ってしまった美少女が、オッサンの姿になって死亡するというシーンをちゃんと描くあたり、鬼八頭氏はよくわかってるマンガ家といえるだろう。
こうしてゲェムは始まるわけだが、各自に渡された賭け金がなくなれば即敗北=死。全10回のゲェムで必ず一人を賭け金0にして脱落させないと全員死亡など、残酷なルールは目白押しだ。しかも、お互いにワケありで追い詰められてしまった者同士、何かの弾みに本当の名前を推測されそうな情報をしゃべってしまいそうになるのだ。
こうしてはじまるハードなゲェムだが、それだけではなかった。途中で1回だけ賭け金を追加できるルールがあるのだが、追加の担保として100万円につき指を1本切り落とすという、さらなる酷いルールまで設定されていたのである。
いやいや、ひたすら精神的にも肉体的にも残酷シーンが目白押しで興奮が収まらない。しかも、もしかすると主人公以外も、中身が男なキャラが混じっているんだろうなと思うと、さらに興奮が。
全年齢向けにもかかわらずここまで描くとは、鬼八頭氏は相当な才能の持ち主に違いない。
この才能を一般作じゃないところでも発揮してほしいと思った。
(文=ピーラー・ホラ)