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「描く!」マンガ展で田中圭一と伊藤剛が語る マンガ家がこの先生きのこるための話も

2016.02.13

■クオリティはこの10年で上がった 課金でキラーコンテンツが出る機運を待望

田中圭一(左)と伊藤剛(右)

 聴衆との質疑応答では、いかにして利益を得るか? という話題にもなった。「ソーシャルゲームが課金で成功しているように、デジタルマンガを課金のシステムで成功させることができるタイミングがあるんじゃないかと思っている」と田中。「インタラクションができて、買わなきゃいけない状況に持ってって買わせてる。マンガではそれができないでしょって言うけど、そういうマンガを制作することがどこかで求められてる。キラーコンテンツが出るタイミングがあるんじゃないかと」。

 田中は、ホラーマンガを応用させる案を提示。「読み終わって2巡目から話が変わるとかだと読者に選択を迫らないので、そういう感じでキラーコンテンツが出てくると新しいフェーズに入ってデジタルだから価値がある、だからお金を払ってもいいになるかもしれない」とソシャゲとは異なる展開を期待。「マンガ家がこれだけいて、食ってる人がこれだけいるんだから、みんな生活してかなきゃならない」。

 このように田中が憂慮しているのは、これまで放っといても売れていたマンガがジリ貧になっている背景があるためだ。「マンガのクオリティは、この10年ですごく上がってると思う。個人的に好きなのはイブニングの『累-かさね-』(松浦だるま)。あれは20年前なら間違いなくミリオンセラー。今はマンガが売れなくなってるから単に面白いねってレベルになってしまっている」

『累-かさね-』(イブニング公式サイトより)

 後半には伊藤が「大学でもマンガ史を教えてるけど、今あるマンガだけをマンガの形だと思わないでほしい。展示でもやってるけど手塚治虫からだと見誤るんで」と本展の意義について触れた。「去年、ちょっと国立国会図書館で昭和20年の10月から24年の10月までのマンガを見た。GHQの検閲があった時代の全部検閲されたマンガが、前まではアメリカに行かないと見られなかったのが、今はデジタル化されて国会図書館の中でだけ閲覧できる。研究者目線は別にしても、こんなマンガあったのかって。手塚だけが超天才で、あとは何もないみたいに思われてるが、戦前からやっててその作品以外に全然資料が残ってないのが結構ある」

 重ねて田中も「戦後マンガ史はイコール手塚じゃないよ、戦前からの流れで手塚が出てきたんだよというのを知ってほしい」と念を押した。

 高崎市美術館での展示は4月10日まで。3月21日には2人のトークも予定されているので、詳しくは現地で耳を傾けてみたい。
(取材・文/真狩祐志)

■『描く!』マンガ展 ~名作を生む画技に迫る-描線・コマ・キャラ~
北九州市漫画ミュージアム(終了)
http://www.ktqmm.jp/kikaku_info/7094
高崎市美術館(2月11日~4月10日)
http://www.city.takasaki.gunma.jp/docs/2015121300012/

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