ブラック・ジャックは“ヤング”でも、その魂は変わりません　『ヤング ブラック・ジャック』加瀬充子監督　インタビュー

——　期待しています。『ブラック・ジャック』といえば、出崎統監督が手掛けたOVA版の印象が強い方もいると思います。しかも高橋さんは同じ虫プロ出身で、手塚作品も一緒に手がけていらっしゃる。出崎版へのイメージに対する意識はあるのではという気もするのですが。
加瀬　私も良輔さんも誰かがやったことをやるのは嫌いなんですよ（笑）。でも、もちろん出崎さんの作品は素晴らしいわけです。実際、演出面でもどうしても引きずられそうになることがあるんです。出崎統さんの作品は、これが出崎流演出だという確固たるものがあるじゃないですか。絵コンテを描かれる方もそういうところを見ていることが多いので、カメラ三回パンをやってきたりするんですよ（笑）。「ああ、これはなしだな」と（苦笑）。
——　印象が強すぎて、つい出崎演出っぽくなるんですね。
加瀬　ハーモニーもね、完璧なハーモニーを作ることができる人は今いないので、「もどき」でいこうということをやったりもしていますね。ただ、基本的には出崎さんの作った『ブラック・ジャック』と同じかたちではない、別作品として捉えてもらえればと思います。私たちは良輔さんを筆頭にして、『ヤング ブラック・ジャック』を作っているという意識でいるんです。
——　では、出崎監督版は完全に意識の外に置いて見たほうがいいですかね。
加瀬　ええっと……これが難しいところで、『ブラック・ジャック』に流れていく作品を私たちは作っているわけです。成長すればブラック・ジャックになる男の物語ですからね。
——　なるほど（笑）。
加瀬　私達もそこに行き着くためのバランスを考えつつやっている面はあるんですよね。
——　一方でナレーションはOVA版で、ブラック・ジャックを演じていた大塚（明夫）さんが入っていますが、後のブラック・ジャックのことを意識されているのですか。
加瀬　ブラック・ジャックといえば、なんといっても大塚さんですからね。それも後の彼に繋げられるようにというところでの施策なんですね。