「アニメが好きなら、業界に来てほしい!」 庵野秀明、川上量生らも登壇「日本アニメ(ーター)見本市初号上映会」レポ

2015.07.20

庵野氏、川上氏らが登壇した「日本アニメ(ーター)見本市初号上映会」の様子。

 7月18日、東京・新宿バルト9にて、「日本アニメ(ーター)見本市初号上映会」が開催された。「日本アニメ(ーター)見本市」とは、限られた予算、期間の中で、オリジナル企画、スピンオフ企画、プロモーション映像、ミュージックPV・VJフィルムなどジャンルを問わず、アニメーターが自由に表現することを可能とするプロジェクトである。エグゼクティブプロデューサーを務める川上量生氏、庵野秀明氏のもとに、日本を代表するアニメーターらが集い、WEB上で毎週新作短編アニメーションが公開していた。

 今回のイベントは、そのサードシーズンのラインナップ発表だけでなく、ファーストシーズンを手掛けた12名のアニメーターと庵野氏と川上氏によるトークセッション。さらに、ファーストシーズン全12作品にサードシーズンより3作品が先行で劇場公開されるという、非常にボリューム満点な内容ということで、チケットはたちまち完売。今回はそんなプレミアムなイベントの模様をレポートしよう。

 今回、ステージに上がったのは川上氏、庵野氏をはじめ、雨宮哲氏、荒牧伸志氏、江本正弘氏、谷東氏、鶴巻和哉氏、平松禎史氏、堀内隆氏、本田雄氏、本間晃氏、前田真宏氏、吉浦康裕氏、吉崎響氏ら、全14名。氷川竜介氏(アニメ研究家・明治大学院客員教授)、山田幸美アナウンサーの司会のもと、トークが繰り広げられた。

 トークライブは、5月末に業界を驚かせた「アニメ業界はあと5年ほどしかもたない」という庵野氏の発言の真意について尋ねるところからスタートした。

 この話題に庵野氏は「そういう(あと5年で寿命がくるという)つもりで話したわけじゃない。ただ厳しいことには変わりがないが、展望がないわけでもない。とはいえ、ビジネススキームとしては難しい」とコメント。川上氏も「(アニメは)社会的影響力のわりに、産業規模が小さい。このままだと、業界の規模が大きくなっても作品だけが増えて、現場は厳しいままの状況が続く。表現技術は上がってきているので、より今後は厳しくなるのでは。(業界全体が)頑張りすぎている」とコメント。対して荒巻氏らベテランアニメーターは「自分たちが業界に入った頃は、今よりももっとひどい業界だった。『一度つぶれたほうがいい』とも言ったりしていたが、今も続いている。今後もこうやって続いていくのかな」と、たたき上げならではのコメントを発した。

 それらを受けて氷川氏は「アニメは、視聴者が思い入れを持たないと何も見えてこない媒体。絵そのものが視聴者の心を動かして、その愛が作品を支えている。業界がぎりぎりのところでもっているのは、その愛が底を支えているところもある。一番危惧しているのは、最近、そこ(絵に対する感動)が細っているところ。だからこそ、動きそのものがエネルギーだという作品が揃うアニメ(ーター)見本市のような企画があることを心強く思う」と、アニメ業界は制作側の熱意とファンの愛が支えていることに加え、現在のアニメ業界に対する危惧について語った。

「日本アニメ(ーター)見本市初号上映会」トークイベントの様子。

 トークライブ終盤、観客からの「ファンがアニメ業界に手助けするためには、どんなことをしたらいいのか」という質問については、雨宮氏が「アニメがすごく好きなら、ぜひ業界に来てほしい!」と、これまた愛にあふれたコメントをすると、庵野氏も「いいこと言うね! 感動した」と賛同。業界のシステムやアニメーターの待遇、人材不足など、ネガティブな話題で語られることも多いアニメ業界だが、アニメ愛をもっている業界志望者に対しては、常に門戸が開かれていることをアピールした。

 トークライブ後は、出演者のサイン色紙プレゼント抽選会が行われたほか、ファーストシーズン全12話とサードシーズンから先行公開される3話が大スクリーンで上映された。およそ3時間超という長丁場なイベントであったが、現場で働くアニメーターたちのリアルなトークや、普段見ているテレビアニメや劇場用アニメのような商業作品ではお目にかかれない、迫力の映像を堪能した観客は、みな満足げな表情で会場を後にした。

 なお、ファーストシーズン全12話とサードシーズンから先行公開される3話は、全国の10か所の映画館で、7月25日より2週間限定で公開される予定だ。詳しくは、日本アニメ(ーター)見本市公式サイトを見てもらいたい。
(取材・文/有田シュン[シティ・コネクション])

■「日本アニメ(ーター)見本市」公式サイト
http://animatorexpo.com/

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