“BL業界はAV化している”!? BLマンガ家の発言を発端に議論勃発、出版社も巻き込む騒動に

2015.04.27

幻冬舎コミックス「ルチル」公式サイトより。

 今月14 日、BL マンガ『PET 契約』(リブレ出版)が東京都青少年健全育成審議会より“不健全図書”の指定を受けた。作者である座裏屋蘭丸のブログによると、『PET 契約』はもともと電子書籍のみで販売していた18 禁作品だったが、書籍化に伴い全年齢仕様に修正したという。それにもかかわらず、同作が不健全図書に指定されてしまったことにネットでは悲しみや疑問の声が上がっている。そんな中、ネット上では“BL マンガとエロ描写”について、議論が交わされることに。BL マンガ家たちの声も多数上がる中、ついには出版社も巻き込む騒動へと発展してしまった。

 今回の騒動は、4月17日に『JITTER BUG』(幻冬舎)の作者・一ノ瀬ゆま(@yumaichinose)が『PET契約』の不健全図書指定を受けて自身のTwitterに「BL業界は今、ドエロいのでなければ大半の出版社編集部は受け付けません」というツイートをしたことがきっかけだった(当該ツイートは現在削除済み)。以下、騒動の発端となったツイートの主要部分を引用する。

(引用者補足:BL業界は)相当にAV化していて、エロを描かない作家の仕事は無いと言っていい状況です。(中略)都条例にも出版業界にも複雑な思いです。


ルチル(引用者補足:幻冬舎発行のBLマンガ誌)はその中、性描写を極限まで控えて性器の描写を禁止している(白抜きでも不可)希有なレーベルで、ドラマによるBLづくりを丁寧にやっています。ルチルが倒れたらBLはもはやエロ一辺倒です。みなさまどうぞルチルをよろしくお願い致します…。


他の出版社さんの内情はわかりませんが、とりあえず、そんなエロ全盛期の中、ルチルはがんばってます。


(以上、一ノ瀬ゆまのツイート[@yumaichinose]より引用)

 ほかにも「男性向けのようなドエロに大半の出版社が走っているのは、ドエロが非常に売れるから」といったツイートをした一ノ瀬。この“BLマンガ業界がAV化している”“「ルチル」がなくなったらBL業界はエロだけになってしまう”といった一ノ瀬のツイートにネットでは「幻冬舎以外の出版社を見下している」「BL界隈を知らない人に“BLはエロばかり”といった間違った印象を与えかねない」など、多くの批判の声が上がった。ほかのBLマンガ家たちも、一ノ瀬の発言に対し異論を唱えている。

エロ少ないストーリー重視のBL描かれてる作家さんはその一社だけじゃなくてほかの出版社さんでも沢山あるので一社だけが頑張っているってなんか違うかなって思う 作家さんや雑誌のカラーにもよるし


(『親友とHしてみました』[海王社]作者・白桃ノリコのツイート[@noriko_haku]より引用)

エロに関しては何も言われないのでストーリー上、あくまで恋愛上必要だなと思った時にしかエロ描いてないなあ。編集部や担当さんによってだいぶ違う気がします。


(『世界の果てよりこんにちは』[リブレ出版] 作者・猫野まりこのツイート[@neconomariko]より引用)

私はどの担当さんからも「エロもっと」「エロこうして下さい」等エロに関して言われた事がほぼ無いです。


(『ひずむ三角、ほどけて絡む』[竹書房] 作者・碗島子のツイート[@wanshimako]より引用)

作家はいつでもエロと修正と条例の狭間で戦いながら、萌えれる面白い漫画を描こうと努力してるよ。内容おざなりの漫画を描こうとしてる作家なんて一人だっていません、皆必死に考えてる


(『ビッチな猫は好奇心に勝てない』[海王社] 作者・天王寺ミオのツイート[@tennohji]より引用)

 このほかにも、BLマンガ家たちの声が数えきれないほど上がり、ついには一ノ瀬がツイート上で名指しした「ルチル」編集部(@rutile_official)も今月20日、Twitterと編集部ブログに「一ノ瀬ゆま氏の発言について」という声明を発表。声明には“あたかもBL業界全体の総意と受け取れるような表現”をした一ノ瀬に厳重注意をしたことなどが綴られており、最後に「当編集部では一般漫画誌のレーティングに則って性表現についてのガイドラインを設け、これに基づいた作品作りをしております」(原文ママ)という一文が添えられている。同日に一ノ瀬もTwitterでこの騒動について「(自身のツイートの)不適切な表現についてルチル編集部様からも注意をいただき猛省しております」と、謝罪をした。

 『PET条約』の不健全図書指定に対するツイートを発端に、多くのBLマンガ家や編集部までも巻き込んだ“BLとエロ”議論。普段表立って語られることの少ないテーマだけに、単なる“炎上”で終わらず、BL業界にとって建設的な議論となってくれたのであればよかったのだが……。

編集部オススメ記事

注目のインタビュー記事

人気記事ランキング

PICK UP ギャラリー