『ガンダム Gのレコンギスタ』 「見ながら考える」で楽しむ! “現代の戦争”を描く

2015.01.27

――毎日、何本ものアニメが目まぐるしく放送されている現代日本。これだけ放送本数が多いと、見るのだって一苦労……。そんな悩める現代オタクのため、「おたぽる」がオリジナル作品を中心にテレビアニメ・レビュー! これさえ読めば、気になるあのアニメのあらすじから評判までがまるわかり!!※本文中には“ネタバレ”が含まれていますので、ご注意ください。

■『ガンダム Gのレコンギスタ
第17話「アイーダの決断」

【今週の極私的見どころ!】
 衝撃の事実判明が続く、ここ数話の『Gレコ』。前回はあこがれのアイーダ(CV:嶋村侑)と姉弟関係ということが発覚し、かなり荒れ気味なベルリ(CV:石井マーク)でしたが、今回は……なんだか吹っ切れた様子? あんまり長い間悩まないのが『Gレコ』世界の住人の傾向のようです。“こだわりをなくした人類”という点で、なんとなく富野由悠季監督の代表作『戦闘メカ ザブングル』のイノセントを思い出しますね。文明崩壊後の世界ということで、世界観的にも通ずるものがあるような。

 そして、敵味方入り乱れての大掃除という、ちょっと何を言っているのかわからない今回のエピソードですが、その裏ではまたも新事実や新展開が。ぼーっと見ていると置いてきぼりになる、意外と重要な回です。

【今週のおすすめ度】
★★★☆☆
(前回のあらすじはこちら

 トワサンガの居住施設・シラノー5の外壁が壊れたことで、宇宙空間に大量の宇宙ゴミ(スペースデブリ)が発生してしまった。そこで、宇宙の大掃除をしているメガファウナ一行。相変わらず唐突なスタートですね。なぜ一行が宇宙掃除を始めたかというと、アイーダいわく「港にいると自由にならないから」とのこと。どうやらキャピタル・アーミィ、アメリア軍、トワサンガのドレット艦隊いずれとも距離を取って事態を見極めたいという目的のためのようです。

 にしても、アメリア軍のアイーダ、キャピタル・ガードのケルベス(CV:須田祐介)、トワサンガのラライヤ(CV:福井裕佳梨)とリンゴ(CV:浅沼晋太郎)と、いつの間にか各勢力の戦士が同行することになっているメガファウナ勢の状況はなかなか面白いですね。特に、リンゴは捕虜だったはずなのにラライヤに惚れているせいか、ちゃっかり一般兵と同じ扱いになっている様子。こんなにユルユルなノリでもOKなのが、『Gレコ』のすごいところです。

 一方、頭痛のために寝込んでいた主人公のベルリは、フラミニア(CV:玉川砂記子)たちレジスタンスのメンバーが「apple」と書かれた巨大な箱をMSデッキに運び込むところを目撃。箱について尋ねても、フラミニアたちは華麗にスルーするばかり。「なんか話そらしてる感あるな」という視聴者コメントもあるように、何かを企んでいるようなのですが……。

 その頃、シラノー5のアパッチ軍港では、G-セルフ捕獲という目的のため、ドレット艦隊よりキャピタル・アーミィに試作MS・ビフロンが供与されていました。マスク(CV:佐藤拓也)はドレット艦隊の目的を、地球側の関係を探ることとキャピタル・アーミィの能力チェックと推測します。その真偽のほどはわかりませんが、四本腕で巨大なブースターを持つ異形のMSはバララ(CV:中原麻衣)が操縦する様子。どうもその完成度はあまり高くはないようです。

 そんな状況の中、ドレット艦隊のマッシュナー中佐(CV:たかはし智秋)の元に、ヘルメス財団から宇宙ゴミについてのクレームが届きます。どうやらトワサンガの上位にヘルメス財団という組織が存在していることがわかります。会話とキャラクターの芝居の中で、状況を読み解くヒントがチラチラと開示されていきます。何度も見直してその情報を理解すると、その関係性や今まで不明瞭だった事態を理解できるようになり、それはそれでなかなか痛快な気分なのですが、やっぱり流し見していると理解するのは難しいですね……。

 その後、クリム(CV:逢坂良太)らアメリア軍とロックパイ(CV:平野潤也)らトワサンガのMS部隊も出撃。G-セルフをめぐって、再び三つ巴の戦闘。そして宇宙掃除が始まる予感です。まさに“呉越同舟”という言葉がぴったりのシラノー5周辺。これ、どう収拾をつけるんでしょうか。

 場面は再びメガファウナ。ベルリたちは、どうもキャピタル・アーミィの創設者クンパ・ルシータ(CV:広瀬彰勇)のことを知っていると思しきロルッカ(CV:谷昌樹)とミラジ(CV:梅津秀行)に真相を尋ねます。しかし、言葉を濁す彼らに、ベルリとアイーダは何かを察した様子。なんちゅーか、説明なしにグイグイと登場人物たちが次の行動を起こすため、視聴者側もついていくのがやっと。

 ともあれ宇宙掃除に出撃することにした一行。ラライヤは、1000年間使われ続けてきたというロートルMS・ネオドゥで出撃するようです。このMSは、一見トワサンガのMSらしい変わったフォルムをしていますが、口元だけガンダムっぽいヒゲと赤い口を持つデザイン。もしかすると宇宙世紀時代のガンダムがベースになっているのかも……。なんて想像すると、ワクワクする「ガンダム」ファンも多いはず。物語はさておいて、こういうディテールで視聴者の気分を盛り上げるのは本当にうまいですね、『Gレコ』。

 ちなみに宇宙掃除に使う道具は、MSの全高よりもさらに大きな、巨大なハエたたきのようなもの。こんなに間抜けな装備で出撃するMSは、今までに見たことがありません。ほのぼのなBGMも相まって、なんだかのどかなムードが画面全体に漂っています。

 しかし、いざネオドゥが出撃すると、事態は急変。ピーキーなチューニングが施されていたネオドゥは暴走。バララの乗るビフロンをはたきではたいてしまうのです。いきなりの展開に「中身はガンダムだからか」「整備不良か?」「誰か仕組んだのか?」と、視聴者も驚きを隠せないコメントを発します。それにしても、今回はいちいち状況に対して裏で何者かの思惑が働いているのでは……という疑りのコメントの数が多いような。『Gレコ』の楽しみ方、というか、世界の見方をみんな理解してきたことが伺えます。ただ見るのではなく、見ながら考える。これが『Gレコ』の楽しみ方なのかもしれません。

 千手観音みたいな戦法が、富野監督の作品『OVERMANキングゲイナー』に出てくるオーバーマンを思わせる、ビフロンの活躍に目がいきがちな今回のバトルシーンですが、そのシーンと並行して描かれるヒロインたちの心理描写にも注目したいところ。ラライヤの世話係だったノレド(CV:寿美菜子)は、ラライヤが完全に回復したことで自分の存在意義を問い、アイーダもついに自らがポンコツであることを認めます。状況に流されるままだった彼女たちは、混迷する事態の中で、やがて自分の生きる道を模索し始めました。正しい道筋など見えない現代では、誰もが当事者であり傍観者には決してなれないのだ。そんなメッセージを感じずにはいられません。

 さてさて、なんだかよくわからないまま小競り合いのような三つ巴の戦闘が始まったかと思うと、次はスペースデブリの大掃除バトルが勃発します。『Gレコ』の世界で唯一のエネルギー源であるフォトンバッテリーを運搬するヘルメス財団の船に傷一つでも付けたら、怒ってエネルギーを分けてもらえなくなるぞ! と脅すロックパイの言葉を受けて、アメリア軍、キャピタル・アーミィ、トワサンガの三軍勢は「負けるか!」とお掃除を開始。理由はまぁわかるんですが、なんというか緊張感があるんだかないんだか。

 しかし、このシーンはある意味、現代の社会の問題を描いたシーンとも言えます。どんなに技術が発達し、強力な兵器を持とうとも、エネルギーを供給してもらえなくなれば、たちまち力を失ってしまう。例え敵同士であっても、エネルギーを分けてもらうためには協力せねばならない、というところに社会の不条理があるのです。このエネルギーを「電力」に置き換えれば、きっと多くの人がなんとなくその意味を理解することでしょう。「これはもう戦争は起こりそうにはないな」という実況コメントもありましたが、そういう意味では、『Gレコ』は間違いなく“現代の戦争”がどういうものかを描いている作品と言えるのです。

 熱いお掃除バトルが繰り広げられる中、今回最大のネタばらしが始まります。メガファウナに潜入したクンパ大佐はロルッカとコンタクト。ロルッカがG-セルフに自爆装置を仕込んだらしきこと、そしてクンパ大佐こそがベルリとアイーダを地球へと亡命させた張本人、ピアニ・カルータその人だということが判明。さらに、宇宙世紀の人類の考え方を憎んでいることが明らかになります。(そういえば以前、「地球人は滅んだほうがいい」的な発言をしていましたが、すでに早い段階から伏線が張られていたんですね!)

 二人の話を聞いてしまったアイーダは、ドレット家とレイハントン家の争いの元凶がヘルメス財団にあると推測。そこに出向き、すべての真相を知るべきだと主張します。問題のヘルメス財団の本拠地は、ビーナス・グロゥブ──金星にあるとのこと。次のメガファウナの目的地は金星なのでしょうか? これまでのガンダム世界では、木星に到達することがやっとでしたが、『Gレコ』ではその記録を更新するのでしょうか?

 残りエピソードは9話。徐々に核心に迫ってきた感があります。が、本当に着地点が見えません。予告によると、次回ベルリはG-セルフとともにヘルメス財団の船に乗って金星に旅立つみたいですが……。ともあれ、座して次回を待ちましょう。恒例の次回予告の決めゼリフは、「息を詰めて見るんじゃないよ」でした!

(文/受動 明日)

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