ガッチャマンとガンダムの色が似てる!? タツノコプロ創始者・吉田竜夫の偉業

2015.01.22

タツノコプロ公式サイトより。

 これまで、マンガ『北斗の拳』の原作者・武論尊氏や『キャプテン翼』(共に集英社)の高橋陽一、マンガ家の石ノ森章太郎といった人物をクローズアップしてきたテレビ番組『林先生の痛快!生きざま大辞典』(TBS系)。1月20日放送分では、アニメ制作プロダクション・タツノコプロの創始者・吉田竜夫氏をフィーチャーしていました。

 今回の番組には、タツノコプロが全面協力。吉田氏は1977年に45歳にして夭逝しており、氏へのインタビューはほとんど残っていません。そこで、当時の資料や映像と共に、吉田氏の長女でキャラクターデザインなどを務める吉田すずか氏(『ハクション大魔王』アクビちゃんのモデル)や、アニメ監督・笹川ひろし氏(『タイムボカン』シリーズ・ボヤッキーのモデル)に話を聞いて、この特集は構成されたとのこと。ちなみに、タツノコプロは2014年1月に日本テレビの子会社となっているので、他局の番組ながらの全面協力という形になっています。

 竜の子プロダクション(後のタツノコプロ)は、1962年、日本初のマンガ制作プロダクションとして誕生。その後、日本のテレビアニメ黎明期であった1965年に『宇宙エース』でアニメ界へ参入すると、『科学忍者隊ガッチャマン』、『タイムボカン』シリーズ、『マッハGoGoGo』『ハクション大魔王』といった数々の名作アニメを生み出していきます。

 番組では、吉田氏の原画と共にそのすごさを解説。もともとマンガ家だった吉田氏が描く原画はハイクオリティな劇画調のタッチで、アニメに起こすアニメーターたちは大変だったといいます。そこで、吉田氏はキャラクターの各場面、表情などあらゆるパターンを描いたマニュアルを用意。その一例として取り上げられた「瞳の描き方の指示」では、「(瞳に)切れ目を入れるとギャグマンガ的でまずい」「黒い部分(瞳孔)が小さいと陰惨に見える」「光の部分が真中ではなく左右どちらかへ」……といったダメな例を細かく指摘しています。そのほか、吉田氏は1話の放送で約4000枚もあるセル画をすべてチェックするという作画監督の作業も行い、アニメーターたちに作画の質の安定を徹底させたそう。こうした吉田氏の姿勢や作風が、湖川友謙氏といったタツノコプロに関わった名アニメーターらに影響を与えたであろうことが伺えます。

 さらに番組では、吉田氏についてまとめた書籍『世界の子供たちに夢を タツノコプロ創始者 天才・吉田竜夫の軌跡』(メディアックス/著:但馬オサム)に所収された美術監督・中村光毅氏の証言から、タツノコプロ作品に登場するヒーローのコスチュームデザインについてのこだわりを紹介。いわく、映える白は正義感を表し、赤は熱血、青は入れると落ち着くという考えから、ヒーローのコスチュームには白色と赤色と青色を盛り込むことを鉄則としていたそうです。確かにガッチャマン、キャシャーン、ヤッターマンなどを見ると、このカラーリングとなっています。

 そんな吉田氏の薫陶を受けたタツノコプロ出身の大御所は大勢おり、ゲーム『ファイナルファンタジー』シリーズのキャラクターデザインを手がける天野喜孝氏のほか、『機動戦士ガンダム』のメカデザイナー・大河原邦男氏も『ヤッターマン』のビックリドッキリメカなどを担当。番組ゲストの土田晃之氏は、大河原氏の手がけた『機動戦士ガンダム』のガンダムも、そのポリシーに影響を受けたカラーリングだったのでは、と推測していました。

 そんな吉田氏と仕事をしたクリエイターたちが口を揃えて言うのは、「吉田竜夫は褒め上手」ということ。前出の『世界の子供たちに夢を』から、タツノコプロで『てんとう虫の歌』などのキャラクターデザインを手がけた河井ノア氏が遊びで描いたイラストに対して、吉田氏がこっそり絵の端に「嫉妬した」と書き添えてくれたというエピソードも紹介されていました。河合氏はその“褒め言葉”に感激したといいます。そのほか、今回、番組でナレーションを務めたドロンジョの声優・小原乃梨子氏も、吉田氏に手を握られて「面白くしてくれてありがとう」と言われたことがあるそうです。

 タツノコプロの社是は「世界の子供たちに夢を」。タツノコプロ作品のキャラクターは無国籍風なことも多く、番組中では「世界を意識して作っていた」とも紹介されていました。実は、かつてタツノコプロには遊園地を作る計画もあり、用地の候補まで挙がっていたそう。「もし“タツノコランド”が実現していたら……」そう思わざるをえません(ちなみに、過去にはタツノコランドという、タツノコプロによるプラモデルブランドもありました)。折しも、現在は“新世代の『ヤッターマン』”ともいえる(?)テレビアニメ『夜ノヤッターマン』が放送中。吉田氏による創設から50年余り、老舗スタジオの活躍から、まだまだ目が離せそうにありません。

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