最初は叩かれた!? 担当者に聞く!アニメ制作会社・スタジオディーンがボーカロイドを生んだ理由【前編】

2014.08.18

モーターサイクルショーでの「スタジオディーン」ブースの様子。

 ことの始めは、5月に行われたモーターサイクルショーだった。新型バイクやカスタムパーツなど(……と、自動車系イベントと比べると若干露出度の多いコンパニオンのおねーさん)の展示が行われるとあって、まったくのプライベートでフラフラと出かけてきたわけだが、会場の一角で見覚えのある文字が目に入ってきた。「スタジオディーン」。言わずと知れた老舗アニメ制作スタジオである。ブースを見れば、キャラの描かれた痛車とコスプレのおねーさん。その痛車もなぜかオフローダーという異色の組み合わせ。痛車に描かれたキャラの名は、『蒼姫ラピス』と『メルリ』。この2人のボーカロイドをプロモートするアニメスタジオの意図とは? まずは「なんでアニメスタジオがモータースポーツに?」という素朴な疑問をぶつけるべく、日を改めて担当者を直撃してみた。

■新規事業を模索するアニメスタジオ

 今回対応していただいたのは、スタジオディーンの新規事業部長兼VOCALOID事業部長、さらにデジタル部統括も務める宮本逸雄さん。

宮本逸雄(以下、宮本) 基本的に我々(スタジオディーン)はテレビアニメを作っています。アニメを作って、納品して、制作費をいただく、こういう形(ビジネスモデル)です。ですが、10年弱くらい前に放送される(アニメの)作品数のピークがあって、徐々に下がってしまった。今はまた回復傾向にある状態です。そのアニメ制作の量が下がってきた頃に、うちの会社の主軸はアニメーションビジネスで変わらないとしても、このままでいいのかと。新しいを始めないといけないのではないか、新しいことをやることによって、本業のアニメに返ってくる何かが作れたらいいな、というのがあって、色々(事業を)始めたんです。会社の元気なうちに(笑)。

――余力のあるうちに投資しようと。

宮本 いくつかの事業を始めまして、その中の一つがSNSゲームや今回のようなボーカロイド事業。ほかにもオリジナルキャラクターを作ったり、音楽ビジネスもやっているところです。

 我々はいつも作りたいアニメーションを作って、それをユーザーが見て楽しんでいただいてっていう形です。けれどボーカロイドはちょっと違いまして、VOCALOIDというツールを売って、みんなで盛り上げていく。(ユーザーに対する)アプローチの方向性がまったく違うのが面白いところです。

――2011年にスタジオディーンさんが立ち上げた新レーベル「idプロジェクト」というのは、どういったものなのでしょう?

宮本 うちが企画しているオリジナルアニメのプロジェクトです。『わーなびっ.jk』(外部参照)という女子高生ものの企画なのですが、マンガを描いたり曲を作ったりドラマを作ったり……。あ、そうそう、前に放送していたアニメ『メガネブ!』も、この「idプロジェクト」から出てきた作品です。

『メガネブ!』は、オリジナルドラマCDを「idプロジェクト」で制作して、コミケットにて販売・営業したら、乗ってくれる会社さんがあったので、「アニメ化しましょう」となりました。結局CDは3枚くらい出しましたね。オリジナル作品においては、今後はこういうことも増えてくるんじゃないかなと。

――つまり、スタジオディーンとしては、内部の企画を内製でアニメ化するという方針だということでしょうか。一般のアニメ制作会社のように、ライトノベルなどの原作を持ってきて絵だけ作る(制作)、という既存のスキームから脱却したい?

宮本 外部原作も弊社の仕事のメインですが、やっぱりコンテンツ屋さんとして考えると一階層上に上がりたいんですよ。ライセンスを受注するのではなく、発行する側になれるように頑張っていきたいです。

――制作会社自体がコンテンツホルダーになると。制作スタジオの京都アニメーションも自社のラノベレーベル「KAエスマ文庫」から原作を供給するなど、各社その方向へ向かってますよね。スタジオジブリみたいに、とまでは言いませんが(笑)。

宮本 他社のみなさんも、同じように思っているんじゃないですかね。この考え方自体は、新しいものではないと思っています。

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