トキワ荘の思い出に『3月のライオン』秘話まで! 「第18回手塚治虫文化賞」贈呈式レポート

2014.06.03

 続き、新生賞の今日マチ子の代理として壇上に上がったのは、今日氏原作の舞台『cocoon』で主演を務めた女優・青柳いづみ氏。挨拶を求められると青柳氏は「こんにちは。今日マチ子です」と会場を笑わせ、「私にとって彼女(青柳氏)の身体は、自分の一部でもあるような気がしています。今回、この青柳いづみの身体を今日マチ子と呼んでくださいと朝日新聞社さまにお願いしたところ、『嘘はいけない』とたしなめられてしまいました。嘘はいけない。でも私は嘘が好き。マンガを描くということは、あらゆる嘘を自在に渡り歩くことです」と今日氏の言葉を淡々とその口に乗せる。最後に「手塚治虫という虫つきのペンネームが本当の名前を超えて現実に君臨しているように、私も嘘を掘り続けて“本当”に届くことができるよう、これからも描き続けていきたいと思います」と締めくくり、異例の演出で列席者にセンセーショナルな印象を残した。

 短編賞を受賞した施川ユウキ氏は「(賞を受賞できたことが)いまだに現実感がなく、何かの手違いでしたと後で言われるのではないかとドキドキしています」とユーモアある切り口でスピーチを始め、「マンガ家人生の中で最上の栄誉となりました」と興奮冷めやらぬ喜びを会場に届けた。そして特別賞の発表がされると、会場は割れんばかりの拍手に包まれた。藤子不二雄(A)氏は壇上で「手塚先生のマンガ『新宝島』を読んだ時、まさに青天の霹靂といった気分を味わいました。それからマンガを一生の仕事にしようと思って、マンガ道をまっしぐらに進んできました」と当時を振り返ると、「僕は今年で満80歳のたいへんなジイさんで、そろそろリタイアして田舎暮らしをしようと思っていましたが、今回こんな賞をもらったので、少しパワーアップしてもうちょっと頑張ってみようかなと思っております」と力強く宣言。これまで該当作品なしとされることの多かった特別賞だが、手塚氏を取り巻く「トキワ荘」の青春群像劇を描いた同作ほどふさわしい受賞作は他にないだろう。

読者賞を授賞した『宇宙兄弟』の小山宙哉氏。(撮影/浜田六郎)

 最後に読者賞に選ばれた『宇宙兄弟』の小山宙哉氏が壇上に上がると、投票をした読者の代表2人から花束が贈られた。小山氏は「『宇宙兄弟』は現在23巻まで刊行されている長い作品ですが、まだ読者の皆さまに評価され、選んでいただけたことをすごく嬉しく思います」と述べた後、「アニメ映画の脚本や絵コンテを進めているため、今は連載が止まっています。マンガが描けないことがつらいと感じたのは2度目で、1度目の時はサッカーで右手首を骨折した時。その時は完治してからのほうが骨折前より絵がうまくなっていたので、今回も(復帰後に)新たな力が肉付けされているのではないかと思っています。復帰したら、読者の皆さんの期待を裏切らないようなマンガをガンガン描いていきます」と意欲を表明した。

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