夢オチ最終回もあり得た!? 永遠の小学四年生“あさりちゃん”が、五年生になり36年の歴史に幕

2014.03.02

あさりちゃん第100巻(小学館/室山まゆみ)

「小学二年生」(小学館)などで、1978年から2014年まで36年間という長期に渡って連載されてきたマンガ『あさりちゃん』が、2月28日に発売された単行本第100巻で、完結を迎えた。

 浜野家の勉強は苦手だがスポーツ万能で奔放な性格の次女・あさりと、秀才の長女・タタミとの家庭内のやり取りを中心に、学校や近所などで繰り広げられるドタバタを描いた大人気作。1982年にはアニメ化もされており、誰もが一度は読んだり、見たことがあるであろう国民的なマンガにまで成長した。

 気になる100巻の最終話「仰げば尊し」は、特にしんみりする様子もなく、通常のテンションで展開。タタミが小学校を卒業するため、あさりと卒業式の練習をするエピソードが描かれた。

 これまでの連載の中には、『中学生あさりちゃん』や『ハイスクールあさりちゃん』、『カリスマ保育士あさりちゃん』といった未来のあさりちゃんが描かれたエピソードもあったが、タタミの卒業と同時に、基本設定が永遠の小学四年生だったあさりもついに進級することになるため、連載はこれにて終了とされた。

 また、100巻の「作者のぺえじ」では、あさりがオリンピックに出場してメダリストになって終わるという案や、読者から投稿された「『あさりちゃん』は、実は病弱なあさりちゃんが自分の理想を描いていたマンガだった」という最終回案などが明かされていた(前者は「安易すぎるから」、後者は「こんなのあさりじゃない(泣)」という理由でボツに)。

 筆者は子どもの頃、『あさりちゃん』を見ては、勉強ができて、あさりに対して意地悪なタタミを「嫌な姉さんだなぁ」と嫌っていた。しかし、今にして思うと、親の期待に応えようと勉強をがんばる反面で、子ども特有の狡賢さや妙に空気を読むところも持っている彼女こそが、一番小学生らしく描かれていたのではないかと思う。そして、その狡賢さや周囲の顔色を伺いながら子どもを“演じる”ことを多少やっていた僕は、そんなタタミに同族嫌悪にも似た感覚を持ってしまったのではないのだろうか(タタミほど勉強ができたわけじゃないけど)。

 だからこそ、自分の欲望に対して猪突猛進するあさりの姿は、タタミと同じように“いい子”でいなければならなかった少年少女たちの憧れにもなっていたのではないか……と考えを巡らせてみたけど、100巻を読んでみると『あさりちゃん』は、あさりとタタミが繰り広げる勢いとテンションの高いやり取りと、そのギャグ描写があってのものだと、改めて気付かされた。やっぱり『あさりちゃん』は純然たるギャグマンガだ。

 そんな『あさりちゃん』の完結を記念して、千葉県のイオンモール幕張では、3月1日~23日まで「あさりちゃんクイズラリー」、3月20日~23日まで「あさりちゃん展示イベント」、3月23日には作者による「あさりちゃん100巻記念トークイベント」を開催。ずっと『あさりちゃん』ファンだった人も、この記事を読んでふと懐かしくなった人も、足を運んでみてはいかがだろうか。
(文/高橋ダイスケ)

あさりちゃん第100巻
作:室山まゆみ
出版社:小学館
価格:450円

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