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韓国の二次元規制法の問題を、朴景信氏に聞いた!

大量逮捕は「警察の点数稼ぎ」?未成年もどんどん逮捕される韓国の二次元規制

2013.09.19

「アチョン法の問題は、実在と仮想とを同じに処罰すること。これは表現の自由に抵触します。表現を処罰できるのは、その表現が切迫した危険を持つ時だけです。世界各国で、仮想の表現物が実際の児童を虐待することはないという判決が出ています。スイスでは2009年に調査を行って、このような結果がでていますし、スウェーデンでは2012年にマンガに対して児童性犯罪を適用することは違憲だとする判決が出ています」

「そもそも、仮想の児童を処罰しても適用は無理です。アチョン法の2条5号では“児童青少年として認識することができる表現物”という定義を定めていますが、ここでいう認識とはなんでしょうか? キャラクターが視覚的に18歳11ヶ月と認識できた時と、19歳に認識できた時とで処罰が変わるのは妥当でしょうか」
 
 韓国の裁判所も、アチョン法のおかしさに気づいている。既にいくつもの裁判が起きているが2013年5月以降、成人が制服を着た作品や日本のマンガに対して違憲性を指摘しているのだ。

「5月には議政府市の裁判所がアチョン法の違憲性を憲法裁判所に提起しました。また、8月には日本アニメ『ブラック・バイブル』が摘発された事件でも違憲だとして憲法裁判所に提起がなされています」

 そもそも2000人あまりもの逮捕者が出た理由として、朴氏は警察の人事考課が理由だと指摘する。

「最近まで、ワイセツ物配布は特進点数に加算されなかったのですが、“児童ポルノ”が加算されるようになっていました。その結果、2011年には年間約100件だった児童性犯罪が2012年には2224件と、22倍にも増加してしまったのです」

 今、世界で仮想物の制作や配布を児童性犯罪として明示しているのは、このアチョン法だけ。そこで朴氏は、刑法とインターネット法改定で、児童または未成年者に設定された表現物で性行為や性的露出をするものをワイセツ物として取り締まるといった代案を示す。

「この改正によって、実在児童ポルノを厳重に処罰することもできます。現在、韓国警察は仮想の“児童ポルノ”を4大凶悪犯罪として取り締まりに躍起になっています。その状況を変えることができると思います」

 朴氏は、現行の刑法のワイセツ物規制に対しても、そのおかしさを訴え続けている人物だ。その朴氏が、ワイセツ罪で残してもいいから、とりあえずアチョン法をやめようとまで言わねばならぬほど、事態は切迫しているのだ。

「この法律によって、未成年を保護する法律なのに未成年者が逮捕される事態になっています。アチョン法は、そのような人々の未来を奪う法律なのです」

 この法律における「就業制限」とは、病院や学校から児童青少年が訪れる可能性があるあらゆる施設での就業が該当する。つまり、アチョン法によって「人生オワタ」になる人が無数に量産されているという。この法律は、あまりの苛烈さに次第に韓国社会でも、改正すべきという声が芽生えつつあるという。なお、集会には出版業界・同人誌関係者を中心に100人あまりが参加した。
 

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