大手同人書店「とらのあな」が新会社を設立! 「アクアプラス」買収の思惑とは?

2013.10.05

「AQUAPLUS」公式ホームページより。

 10月1日、秋葉原を拠点に同人誌・マンガを扱う書店「コミックとらのあな」を運営する株式会社虎の穴は、持ち株会社ユメノソラホールディングスへの移行を発表。同時に、「AQUAPLUS」と「Leaf」の2つのゲームブランドを保有するゲーム会社・アクアプラスの全株式を取得することも明らかになった。いわば、同人誌書店のとらのあなが、アクアプラスを傘下に収めた形になる。

 ユメノソラホールディングスは、今年10月1日に設立。資本金は3000万円。同社のプレスリリースによれば、グループ内に書籍やグッズなどの企画・製作を担うツクルノモリ株式会社(代表取締役社長 鮎澤 慎二郎)を設けること、アクアプラスの下川 直哉氏は引き続き代表取締役社長に留任することも記されている。

 2009年に一部社員が独立し競合店であるCOMIC ZINを設立した一件や、2012年の池袋店の売り場面積縮小などが話題となった「とらのあな」だが、依然として都内では業界2位の規模を誇っている。同社が、このタイミングでアクアプラスを買収し、持ち株会社へ移行した理由をめぐって、業界内ではさまざまな噂が流れている。

「以前からアクアプラスの下川社長は、飲食店事業に傾注しており、会社の売却を考えていました。ですので、ようやく買収の値段が折り合ったということではないかと思います。とはいえ、(同社所属のイラストレーター・作画家の)みつみ美里の同人誌が、『とらのあな』専売となる……なんてことはないと思いますけどね」(ゲーム業界関係者)

 あるアニメ業界関係者は、プレスリリースで発表された先述のツクルノモリ株式会社に注目する。

「この会社を通じて、グループ内に企画制作部門を設けることで、版権グッズの製造から販売まで、すべてを行うことを目指しているのではないのでしょうか」

 現在アニメ業界では、テレビアニメの改編期ごとに抱き枕カバーからストラップまで、膨大な量の版権グッズが製作される。その多くは、グッズを制作する会社が、権利元に版権を申請、許可を得て製造した後に店舗に卸す形である。この場合だと、店舗の取り分は販売額と卸値の差額分だけ。ところが、自社で製造から販売まで一括して行えば、権利元に支払うライセンス料を除いては、すべて自社の取り分となる。

 非常に美味しいビジネスモデルだが、当然リスクも伴う。もし、売れなかった場合の損失も自社で背負うことになるからだ。

 現状、ユメノソラホールディングスについては噂が噂を呼ぶばかり。奇しくもアクアプラスが所有するleafブランド原作のテレビアニメ『WHITE ALBUM2』放送開始直前に発表された今回の買収劇。同社の今後の進退に注目が集まっている。
(取材・文=昼間 たかし)

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