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クズ人間の一途な愛に思わず感涙! かなりマイナーなアメコミヒーロー『デッドプール』が世界で大ヒット

2016.05.31

 それから2年後、ヴァネッサを遠くから見つめる影があった。末期がんを克服したウェイドだった。武器商人フランシス(エド・スクライン)率いる闇組織の研究所で、ウェイドは最新科学による改造手術を受け、全身に転移していたがんを治癒しただけでなく、どんな怪我でもたちまち回復できる蘇生能力を身に付けていた。フランシスはウェイドを人間兵器として売るつもりで、危険な手術を施したのだ。研究所を逃げ出したウェイドだが、手術の後遺症で顔面にケロイドが残ってしまい、ヴァネッサのもとには戻れずにいる。自慢の顔をメタメタにしたフランシスへの復讐に燃えるウェイド。一方のフランシスもヴァネッサを人質にして、ウェイドを誘き出そうとする。赤いマスクを被ったウェイドは世界平和のためではなく、私怨と愛する女を守るという個人的な理由から戦いに挑む。

 こうしてストーリーだけ抜き出すと、DQN人生を歩む男女の悲惨な物語だけど、ウェイドはとことん明るい(ただのバカ?)。デッドプールの武器は、抜群の身体能力から繰り出す二刀流剣術に、驚異的な肉体再生能力、そして“第四の壁”を超える力。この“第四の壁”って演劇用語で、舞台と客席との間にある見えない壁のこと。デッドプールはこの壁を無視して、戦闘中でも平気な顔でスクリーンから観客に語り掛けてくる。自分のことを「俺ちゃん」と呼ぶ、能天気なおしゃべりキャラぶりが米国をはじめ各国で大人気。一見すると超うざいヤツなんだけど、恋人ヴァネッサにケロイド状の顔を見られたくなくてマスクを被っているように、実は心のキズを隠すためにお下劣ジョークを延々としゃべり続けるわけだ。デッドプールのヒーローらしくないそんな人間的な弱さが、逆に多くの人たちの共感を呼んでいる。

 X-メンのメンバーから鋼鉄の皮膚を持つコロッサス(T・J・ミラー)と超能力の使い手ネガソニック・ティーンエイジ・ウォーヘッド(ブリアナ・ヒルデブランド)が助っ人として参戦する超人バトルが大きな見どころだが、いちばんのクライマックスはヴァネッサとウェイドとの久々の再会シーン。気が強いヴァネッサは、「何で私の前から消えたのよ」とウェイドに思いっきりビンタをかます。いい女ほど、キツいビンタを放つ。どんなに銃弾を浴びてもへっちゃらな体になっていたウェイドだが、この一発のビンタは骨身に沁みる。愚か者のなけなしの純情に、思わずウルッとしてしまう。
(文=長野辰次)

『デッドプール』

監督/ティム・ミラー 脚本/レット・リース&ポール・ワーニック 出演/ライアン・レイノルズ、モリーナ・バッカリン、エド・スクライン、T・J・ミラー、ジーナ・カラーノ、ブリアナ・ヒルデブランド
配給/20世紀フォックス映画 R15+ 6月1日(水)よりTOHOシネマズ日劇ほか全国ロードショー
(c)2016 Twentieth century Fox. All Rights Reseved.
http://www.foxmovies-jp.com/deadpool

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