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看護師とマンガ家

二度と戻りたくない看護学生時代に重ねて…医療ファンタジー『リヒト』を描いた現役ナースの素顔

2015.12.10

■『ONE PIECE』と『ハチクロ』で培われた感性

——小さい頃からマンガは好きだったのですか?

 マンガは好きだったのですが、親があまり買ってくれる人ではなかったんですよ。なので、友達の家で読むくらい。小中高はほとんどマンガを読めなかったんです。むしろ、小説のほうがたくさん読んでいましたね。

 中学2年生の時、家族や友達と上手くいかなくてずいぶん悩んでいた時期がありました。ある時なんて、母親とケンカして、財布も持たずに学生服のまま家を飛び出して。実家は沖縄の南の端のほうだったんですが、北端にあるおばあちゃんの家まで歩いて縦断しようと試みたこともあるくらいです。

 途中、観光客のお姉さんに、「危ないから車に乗りなさい!!」って声をかけられて、断ったら「置き去りにして立ち去れないから!!」って(苦笑)。結局車に乗せてもらって、おばあちゃんちまで送ってもらったのを覚えてます。

 ほとんど車の通らない場所を歩いていたんで、今思えば、あそこで乗せてもらわなかったらヤバかったかもしれませんね(笑)。

 そんな頃に図書館で出会ったのが、『クレヨン王国のパトロール隊長』(講談社青い鳥文庫)という、児童文学小説でした。

 この本を読んで、本当に救われたんです。『クレヨン王国』が好きすぎて、文字も絵も、全部紙を敷いて写したりしていたくらいです。もはや、写経ですね(笑)。

——では、『クレヨン王国のパトロール隊長』など、児童文学が創作の原点に?

 影響はあったかもしれません。ただ、マンガも、大学に入ってバイトを初めてから、むさぼるように読んで。『ONE PIECE』『SLAM DUNK』『幽☆遊☆白書』など、「週刊少年ジャンプ」(すべて集英社)の王道のマンガが好きでした。

 あとは、田村由美さん(『7SEEDS』『BASARA』(共に小学館)など)、羽海野チカさん(『ハチミツとクローバー』(宝島社、集英社)『3月のライオン』(白泉社))も好きです。

——RPG的な要素を持った少年マンガと、一方で女性らしいふわっとした世界観をそこで吸収されたんですね。『リヒト』を描いた時、一番に読んで欲しいと思った相手って、誰でしたか?

 最初に読んでもらいたいと思ったのは、看護学校の学生さんたちですね。主人公たちと一緒に成長してもらいたいと思います。

 看護学生時代は本当に大変で……私は二度と戻りたくないんですけどね(笑)。実習期間に入ると、毎日夜中まで作業があるんですが、翌朝は朝8時に作業を始めなければならない。看護学生として、患者さんと接するのも難しかったです。嫌がられたり、拒否されることもありますし。学生だからと、嫌味をいう先輩看護師もいました。

 ただ看護学生時代しか、患者さんから聞き出せないことがあったのも事実です。看護学生時代って、いろいろできなくて悔しいと思いますが、今自分でできることを一生懸命やって欲しいなと思います。そんな思いが、マンガからも伝われば。

 あ、あと、動物を頑張って描いているので、そこも見てもらいたいです!
(文/村田らむ)

●明(みん)
沖縄県出身。大学卒業後、看護師の仕事の傍らマンガを描き始める。2014年よりコミックスマート社の新人マンガ家育成プログラム「Route M」に参加。同社のマンガアプリ「GANMA!」にて『LICHT-リヒト-』連載開始。マンガと物語をこよなく愛すが、何よりも児童書『クレヨン王国』シリーズ(講談社)がバイブル。趣味は合気道。

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