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7,000円あれば裁判はできる!報酬未払いにライターが挑む【最終回・裁判編】

2015.10.24

■請負か委任かはっきりさせたがらない先方のスタンスを逆手に取る

 しかし実際問題「請負」か「委任」かがはっきりしてフリーランスの仕事が進むことなど、なかなかない。依頼する側の本音は「働いた分だけお金が欲しいなら、今から履歴書せっせと書いて会社員になればいいじゃないですか。自分の立場わかってます? 会社員じゃないくせに働いた分だけお金がもらえる? 寝言言ってもらっちゃ困りますよ。今ハヤリの『お客様』ってやつですかァ? ちゃんと起きてます? まったく愉快な人だな、お金が大好きなんですね、アハハハハ」ではないだろうか(かなり悪意に満ちた感じでお届けしています)。

 今回相手方の会社とのやりとりで、先方の言い分は一貫して「まだお金の話をする段階ではなかったのに、あなたが原稿料を請求してくるのはおかしい」だった。初めてそれを聞いたときに「お金の話をする段階」もなにも、そちらの都合で計画をいったん凍結するのに、なんだそりゃ? と相当トサカにきたのだが、先方としては「これは請負」で通そうとしたのだろう。

 一方で、先方にしても「これは請負です」と最初から明言して仕事を振るケースもほぼない。「これ請負なんで、よろしこ!」と言われたら、私は断る。よっぽどやりたい仕事でなければ、そんなリスクは負いたくない。私が「委任でなければ仕事は受けません」と言えば、おそらく仕事はほぼ来ないのと同様に、先方にしても「これは請負です」では、仕事を請けてくれる人は激減するだろう。「請負だったらうれしいな」な依頼元と、「委任だったらうれしいな」な依頼された側が、共に言わずもがなでわかってるよネ? と小首をかしげ合う状態なのだ。そんなルーズにするから、もめた時に困るのだが、現状がこうなっている以上仕方ない。トラブル時に、先方が請負戦法で来るのは分かっている以上、「いやはや、困りますな、おたくら請負だなんて一言もおっしゃってらっしゃらなかったじゃないですかァ~」で、こちらは委任布陣で受けて立つしかないのだろう。

 最後の欄「添付書類」は、別途用意した書類について記載する。上記の「盆栽を壊され激おこ」なケースでは『領収証 壊れた盆栽の写真 商業登記簿謄本』とあった。なお添付書類は写しを2通(被告が2名のときは3通)用意する。ここでメールや、ICレコーダーの音声書き写しファイルなどがあれば百人力だ。というよりも、それすらないのなら裁判はだいぶ不利なものになるのだろう。

 書類に不備や誤りがなければそのまま手続きが進み、裁判所から裁判の希望日程の連絡が来るという。ただしその日程も被告側が了承しなければ、ずるずる延びていくとのこと。また、少額訴訟はトラブルの速やかな解決を目的としており、原則として審理は1回で、直ちに判決が言い渡される。よって、被告側が「おうおう、祭りだ祭りだ! 受けて立つぜ!」と、やる気満々の場合は、しっかりと反論できる時間の猶予があり、かつ控訴、上告ができる通常の裁判を希望する場合もあるという。こうして2年にも及ぶ、血で血を洗う泥沼の戦いの火ぶたが切って落とされたのであった、ともなりかねないのだ。

 少額訴訟の費用としては収入印紙が1,000円(請求金額が10万円までの場合。以降10万円上がるごとに印紙代は1,000円ずつ上がっていく)。ほか、訴訟における当事者の呼び出しなどに使う切手代として5,025円がかかる。手間は膨大だが、裁判自体は商業登記簿謄本の取得費用を含めても7,000円ほどでできるのだ(なお、切手代は私が話を聞いた裁判所での金額だそうで、自治体により異なる可能性がある)。

 今回のトラブルを通じ、事が起こってからでは遅いと痛感した。聞きにくいことをきちんと聞くこと、そしてそれをメールに残すこと、といった手間を遠慮したり、面倒くさがったことで、かえって大きな手間になり、気の滅入る日々を送る羽目になったのだ。もちろん相手のいることだし、人間のやることなのでトラブルをゼロにはできない。しかし今後もしトラブルになったとしても、事前にやれることはすべてやった、落ち度なし! 勝てる! という状態でトラブルに向かっていけるよう、一介のフリーランスとして徹底していきたい。

※情報は2015年10月時点のもの

(文/石徹白未亜[http://itoshiromia.com/])

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