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誰も語らないパチンコの中のアニメ 第5回

もはや公式二次創作!? 『CRルパン三世』がつかんだ、“パチンコで物語を描く”可能性

2014.05.11

『ルパン三世』は、ドラマもあるけれど、同時に典型的な「ループ型作品」であり、ある意味では永遠に終わらない物語だ。ルパンは永遠に大泥棒であり続けるし、銭形は永遠にルパンを追い続ける。少なくとも、その関係は基本的には変わらないはずだと多くの視聴者が信じているタイプの作品だ。その構造は、同じことを繰り返させるパチンコの原理と相性がいい。そして、ルパンたちに賑やかな日常が想像できるというのも、パチンコ的に優れた点だ。ドラマチックさと日常の両立という点で『ルパン三世』は極めてパチンコ的な世界観を持っているといえる。そして、『CRルパン三世』シリーズは、まさにそれをうまく表現してきた。

 特徴だけ取り出せば、これほど革命的なシリーズはなかなかないといっていい。だが、そうした革新的な取り組みとは裏腹に、04年内規改正以降の『ルパン』シリーズは、歴史的大ヒット台となれずにいたと思う。少なくとも、『エヴァ』や『北斗の拳』シリーズのようにホールの定番・看板となり、演出面でフォロワーを生むことはなかった。ある意味では、「やっぱり物語とパチンコは相性が悪いんだ」と僕に印象づけたシリーズであったともいえる。ドラマ性はパチンコにおけるヒットの切り札にはならない、と。

 だが、平和はルパンとドラマを諦めなかった。2013年11月に導入開始された『CRルパン三世 ~消されたルパン~』は、04年内規改正以降の『ルパン』シリーズの集大成といえる台だ。ルパン三世が何者かの陰謀により「存在しない人物」にされ、どんな盗みをしてもニュースにならなくなり、銭形も「存在しない人物を追うことはできない」ということでその任を解かれる。『消されたルパン』にはそんな、まさに映画そのものというようなストーリーがあり、連チャンとともに物語が進んでいく。逆にいえば、これまでのシリーズと比べて挑戦的な台というわけではない。

 だが、『消されたルパン』はヒットした。「した」というより、今まさにホールの主役といっていい。新たな台が導入されては短期間で入れ替えられていく中で、本作は撤去どころか増台されている。パチンコ機の出荷台数自体が減少傾向に入っていることもあり、単純な台数でいったら過去の作品のほうが上回っている可能性はあるが、息の長さでいったら04年以降の『ルパン三世』シリーズで最も長期稼働しそうな様相を見せている。

『消されたルパン』のヒット要因を端的に「これ」と語るのは難しい。すでに書いたように演出的に挑戦的な部分があるとはいいがたいし、スペック面でも決して目新しいものではない。個人的な評価をいうなら、04年以降のルパンシリーズは12年の『CRルパン三世 World is mine』で基本的な部分は完成しており、『消されたルパン』はそれを発展させた台という印象がある。実際『World is mine』も決して評価の低い台ではなかったと思う。とりわけ音楽、SEなどは非常にスタイリッシュであり、こうした面は『消されたルパン』にダイレクトに継承されている。

 にもかかわらず、『消されたルパン』だけが特別なヒットになった。それは、しいていうなら「演出などの総合的なレベルの高さ」という言葉に集約されるだろう。音楽、SE、キャラクターに世界観など、原作が培ってきた魅力と、パチンコ的快感がかみ合って飛び抜けてかっこいい台になったのだ、と。

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