「キャラの台詞が下品」とブーイングも!? 独特の“鬱感”に視聴者も様子見の『M3~ソノ黒キ鋼~』

2014.04.23

――毎日、何本ものアニメが目まぐるしく放送されている現代日本。これだけ放送本数が多いと、見るのだって一苦労……。そんな悩める現代オタクのため、「おたぽる」がオリジナル作品を中心にテレビアニメ・レビュー! これさえ読めば、気になるあのアニメのあらすじから評判までがまるわかり!!※本文中には“ネタバレ”が含まれていますので、ご注意ください。

■『M3~ソノ黒キ鋼~
第1話「降星ノ夜」

 4月21日、ようやく2014年春のアニメが出そろいました!

 今期、数少ないオリジナルアニメとなる『M3~ソノ黒キ鋼~』(以下、『M3』)。制作は『マクロス』シリーズでお馴染みのサテライト、監督は『美少女戦士セーラームーン』『おジャ魔女どれみ』などで知られるアニメ界の大御所・佐藤順一氏が担当します。少女向けアニメの印象が強い佐藤監督ですが、甚目喜一名義で『機動戦士Zガンダム』や『新世紀エヴァンゲリオン』などの絵コンテを切ったりと、ロボットアニメへの造詣はかなり深いはずです。

 シリーズ構成は、良くも悪くも心情表現に定評がある岡田麿里氏。過去には『黒執事』『GOSICK -ゴシック-』『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』など話題作を手がけ、今期もオリジナルアニメ『selector infected WIXOSS』と平行してシリーズ構成を担当しています。筆者は岡田氏独特の“鬱感”のようなものが結構好きなんですが、2クール放送ともなると視聴が苦しくなるかもしれませんね(笑)。

【今週のおすすめ度】
★★★☆☆

 混沌に支配された「無明領域(むみょうりょういき)」で人間は生きられず、避難生活を余儀なくされていました。しかし無明領域で生まれた異形の者「イマシメ」は、たびたび避難地区に現れては人々の生活を脅かしていたのです。

 復興支援企業体Ix(イクス)のあるカワダハラ市。イクスの運営する施設で成り立つこの町で、ククノチ学園に通う鷺沼アカシ(さぎぬまあかし/CV:松岡禎丞)もまたこの地で生活を送っていました。イマシメの活動が活発になる夜間は、出歩く人もほとんどいません。そんな夜に出歩いていたアカシの目の前に現れたのは、巨大なイマシメでした。

 追うように現れた対イマシメ用戦闘機・ヴェスによって狙撃されるも、イマシメはそのまま逃走。アカシはヴェスの搭乗員・霞ライカ(かすみらいか/CV:矢作紗友里)に「学生は帰宅しているはずだろう!」と怒られます。この時、ライカが赤黒いイマシメの様相を指して「赤ウンコ」と連呼しますが、ネットでは「第一話は『赤ウンコ』にすべて持っていかれた」「下品」と視聴者憮然。先行きが不安になるほど不評の嵐でした。

 そんな時分、イクスは国から無明領域への内部調査が認可されます。アカシはその調査隊・ヴェスパイロット育成コースの第一期生に選ばれるのです。一期生のメンバーには、同級生の爽やか少年・波戸イワト(なみといわと/CV:前野智昭)、“怨デレ”の弓月マアム(ゆづきまあむ/CV:福圓美里)、裏表の激しいククノチ学園用務員・破先エミル(はざきえみる/CV:日笠陽子)、男前なヴェスのテストパイロット・ライカの他、説明会に欠席している3人の少年少女が集められました。

 パイロット育成の猛特訓が始まった数日後、ヴェスに搭乗して夜間パトロールを兼ねた訓練にアカシとエミルが選ばれます。その訓練に突如イマシメが現れるのです。不意打ちを浴びせ、パニックに陥ったエミルを引きずっていくイマシメ。後を追うアカシの目の前に、うれしそうに戦況を眺める少年が現れます。その人物は、写真で見たチームメイトの真木ミナシ(まきみなし/CV:柿原徹也)でした。何だか彼、『新世紀エヴァンゲリオン』の軍オタ・相田ケンスケを彷彿させますね。それにしても、ヴェスがゲーム『サクラ大戦』の霊子甲冑に見えるのは筆者だけでしょうか?

 命からがら逃げ惑うエミルが放置したヴェスが、ミナシめがけて滑り落ちていきます。安否不明となったミナシを不安に思うアカシの耳に、「ここにいるよ」とミナシの声が聞こえます。

 その瞬間、一期生たちの脳裏に幼い自分たちの姿が映し出されます。誰かを捜して走り回る自分たち――そんな時に聞こえた「ここにいるよ」という謎の声。我に返った一期生たちですが、脳裏に浮かんだ映像がなんなのかさえもわからない様子で混乱顔。一方、エミルの元へイマシメが近づきます。

「こいつも探してるんだ」というミナシの言葉に、エミルが拾ったペンダントを自分に渡すよう指示するアカシですが、それどころじゃないとエミルは口答え。「さっさとしろ豚女!」と叫んだアカシに逆ギレしたエミルは、「返してやるわよ、インポ野郎!!」とペンダントを地面に投げつけるのです。

 それをすぐさま取りに行ったイマシメ。そのペンダントには、親子の写真がはめ込まれていました。このイマシメはおそらく息子を失った母親なのだろう、そんなライカのつぶやきを拾ってアカシは絞り出すように言います。

「過去にとらわれているより、とどめを刺されたほうがずっと楽だ」

 アカシの脳裏にフラッシュバックした記憶は兄の遺影――アカシはイマシメの核を破壊します。するとどこからともなく少女の歌が聞こえてきました。目を上げたアカシの目に映ったのは、宙に浮かぶ「躯」と呼ばれたイマシメと少女の姿。彼女たちはしばらくアカシと見つめ合った後、夜空の闇に消えたのでした――。



 いろいろと謎が多すぎて、とにかく先が気になるアニメです。現時点ではなんとも評価し難いですが、これだけはハッキリ言えます。面白おかしく観られるアニメではありません。ただし、見応えはあると思います。少なくとも筆者は好きな作風です。

 ネットでは「画面が暗い」と、多くの視聴者がコメント。でも筆者はそれほど違和感を覚えませんでした。もともと「歪でどこまでも濃い黒。黒がすべてを飲み込み、すべてを奪い去った」という世界観ですから、暗くないと逆に不自然な気がしますね。ただ、意見の多かった「キャラの台詞が下品」には同意です。例外なく誰もがいきなり口汚くなるのはどうしてでしょう……?

 “キャラが「馬鹿な大人とクールな子ども」に分かれている”“世界の敵と戦うのが少年少女”“イクスの事業内容”といったところに、『新世紀エヴァンゲリオン』との類似点を感じている視聴者も多かったようです。近年人気の作品設定「世界の危機×クールな主人公」に視聴者の反応はいいようですが、「そろそろ昔のアニメのような主人公の熱血私怨ものが見たい」との声もちらほら見受けられました。

 全体の感想をまとめると、「1話の掴みは弱い。でもメインキャラが全員揃うであろう3話までは見てみる」「意外に面白いけど、この作風じゃ売れないだろうとも思った」「視聴したくなる雰囲気だけは感じた。好き嫌いがはっきりしそう」と微妙な感想が多数。期待はされているようですが、2話の展開によって視聴率が大きく変動しそうですね。

 アニメ告知も遅く、何かと情報が少ない本作。第1話ニコ生先行放送にしても、「情報不足でストーリーが理解しづらい。ニコ視聴者にあまり受ける作風じゃない」との意見が殺到しているようです。筆者としても、ネットで「M3 アニメ」や「ソノ黒キ鋼」で検索しても公式サイトがひっかからないところに不安を感じます。それが何かしらの策略ならいいのですが……。

 何はともあれ、待ちに待った新作アニメ『M3』。今後の展開に注目していきたいと思います!
(文/牧野絵美)

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