主人公が“イタい”けど目が離せない! 『サムライフラメンコ』第1話の評価は?
2013.10.11
――毎日、何本ものアニメが目まぐるしく放送されている現代日本。これだけ放送本数が多いと、見るのだって一苦労……。そんな悩める現代オタクのため、「おたぽる」がオリジナル作品を中心にテレビアニメ・レビュー! これさえ読めば、気になるあのアニメのあらすじから評判までがまるわかり!!※本文中には“ネタバレ”が含まれていますので、ご注意下さい。
■『サムライフラメンコ』
第1話「サムライフラメンコ、デビュー!」
大人になりたくない、“大人”たちへ――
10月10日、上のキャッチコピーを掲げたアニメが産声を上げた。
その名も『サムライフラメンコ』(通称:サムメンコ)。妙な響きのあるタイトルだが、フジテレビ木曜深夜放送の「ノイタミナ枠」と聞けば、アニメファンの魂はいやがおうにも揺さぶられる。しかも、『サムライチャンプルー』や『ミチコとハッチン』などの鮮烈なオリジナルアニメーションを得意とするマングローブが制作とくれば、なおさらだ。監督は『夏目友人帳』、『バッカーノ!』などでお馴染み大森貴弘氏、構成は斬新なセンスが光る『R.O.D』シリーズの原作作家・倉田英之氏、キャラクター原案は『うたの☆プリンスさまっ♪』で女性の心をガッツリ掴んだ倉花千夏氏が担当している。
では、10日より放送が開始した『サムライフラメンコ』とはいったいどんな作品なのか? 第1話のストーリーを見ていこう。
善良な市民の安全と財産を守るために日夜奮闘する“お巡りさん”後藤英徳(ごとうひでのり/CV:杉田智和)は、職務から離れると迷惑行為なども見て見ぬフリをしていた。そんな後藤がコンビニ帰りに見つけたのは、全裸で「(自分は)セイギの味方だ」と訴える“残念なイケメンモデル”羽佐間正義(はざままさよし/CV:増田俊樹)だ。
ことの成り行きを職質するため、羽佐間の家まで付き添った後藤。聞くと、羽佐間が全裸だったのは、ヒーローに憧れている彼が信号無視の酔っぱらいを注意したことから揉み合いとなり、着ていたオーダーメイドのヒーロースーツを破かれてしまったからだという。特撮ヒーローのハラキリサンシャイン(CV:関智一)に心酔し、本気でヒーローになりたいと語る羽佐間。後藤はそんな羽佐間にドン引きしつつも、「二度とヒーローごっこはやるな」という条件つきでお咎めなしとした。
珍妙な事件はこれにて一件落着――と思いきや、後藤は羽佐間に懐かれてしまう。
そんなある日、後藤がかかってきた電話を取ると、羽佐間が電話口で言い放った。
「後藤さ~ん! やっちゃいました。スーツ色違いの予備があって、一応使っとこうと思って……」
「はっはーん、わかった。お前、本当はバカだなっ!?」
正義の言葉尻に、怒りを押し殺し損ねた後藤の怒号がかぶる。羽佐間は、深夜徘徊にふける中学生たちを注意するつもりが、逆に狩られてしまったのだ。命からがら逃げおおせるも、どこからともなくハラキリサンシャインの声がする。
「何のためにヒーローになったのか。何のために生きているのか」
この言葉に突き動かされ、再び中学生たちの元へと戻った羽佐間は、彼らに熱い叱咤をぶつける。しかし、その声が届くことはなく、中学生から再び暴行を受ける羽佐間。そこへ後藤が駆けつけ、中学生は逃げていく。そんな痛い目にあっても、羽佐間は正義を成すことを止める気はないことを後藤に伝えるのだった。
こうして、“ヘタレヒーロー”正義の英雄伝説が幕を開けた。
『サムメンコ』の醍醐味はアップテンポのストーリー展開に隠された「社会諷刺」にある。第一話から抜粋するなら、羽佐間の叱責に対し、「誰にも迷惑かけてないし」と嘲笑する不良中学生たちへ向け羽佐間は叫ぶ。「君たちは迷惑だ。しかも死ぬほどうっとうしい」と。そこで語られる親や社会に対する独特の価値観は、今後明かされるであろう羽佐間の生い立ちを匂わせる。重すぎないテイストで放たれる言葉が、ギャグ要素の強い物語に抜けない棘を突き刺す。
導入部から数分、筆者の感想は「羽佐間、イタい」の一言だった。ただ、不思議と視聴を止める気にはなれず、むしろ「次は何やっちゃうの?」と画面にかじりついた。ネットの反応を観察しても、筆者と同じ心境のファンは多いようで、評判としては、好評8割(内、様子見2割)といったところ。なかなか好調な滑り出しといえるだろう。
「バカだけどカッコイイ」との評価が多く、羽佐間の“熱い魂”に共感しているようだ。“完璧じゃないヒーロー”というのがまた、高評価となる理由のひとつでもある。一方で、それほど否定的ではないにしろ「2クールもやる話か?」という声や、後藤と羽佐間の掛け合いが「ホモ(BL)っぽい」という疑惑の声も上がっている。また、オタク青年がコスプレからヒーローになっていくという映画『キック・アス』との類似も指摘されていた。何はともあれ、「これから化けそう」と期待のかかる本作。鬼が出るか仏がでるか。今後の展開から目が離せない。
(文/牧野絵美)