任天堂Wii U低迷の理由はユーザの無理解?SNSにユーザ奪われる王者の誤解
2013.07.01
●ゲームのサービス化
任天堂の戦略的な誤りが、もう1つある。それは、ゲームソフトを単品売りするだけで、「サービス化」していないことだ。
ゲームソフトに限らず一般消費者向けの情報商材は、その商材データを継続的に利用し、さらにデータを加工して他の商材に再利用できる仕組みが必要だ。ところが任天堂はそうしていない。ゲームソフトは「再利用する経営資源」ではなく、「一回出荷したらそれでおしまいの、売り切りの消費財」としか考えていないからだといわれている。
同社が歯牙にもかけなかったサービス化を行っているのが、SNSやスマホのベンダだ。
例えば、健康関連ではスマホを使って運動データをネット上で管理する「RunKeeper」、NHKの健康番組『ためしてガッテン』が提供している体重を管理する「ガッテンダイエットクラブ」などがある。これはほんの一例。無料や安い料金で利用できるさまざまなサービスが、SNSやスマホでは続々と誕生している。
一度はDSで『脳トレ』『えいご漬け』など生活密着型サービスのブームを起こし、ゲームの新しいユーザ層を開拓した任天堂だが、今は任天堂のユーザがSNSやスマホの草刈り場になりつつある。
70〜80年代に中小企業のIT化を先導したオフコンは、90年代に入ると、専用機であるがゆえに汎用機のパソコンに駆逐された。この状況が、現在のゲーム市場で進行中といえる。
一般ユーザが、利便性の高い汎用プラットホームを安価に入手できるようになった現在、「ゲーム」という特定機能のプラットホームしか持たないベンダは、どう見ても競争上有利な立場にあるとはいえない。
ゲームアナリストは「任天堂は、もはやゲーム業界を代表するベンダではなくなりつつある。それどころか、今後はニッチなゲームニーズを満たすためのベンダに転落する可能性すらある」と懸念している。
それでも岩田社長は「業績不振は一過性のもの。専用機だから、SNSやスマホにない高品質でスマートで、家族で楽しめる健全なゲームを提供できる。これをお客様が理解するようになったら業績は上向く」と、クローズドなプラットホーム戦略の優位性を強調している。
(文=福井晋/フリーライター 2013.02.10Business Journal既出)