“生涯ドルヲタ”ライターの「アイドル深夜徘徊」vol.42

ドラマ『同期のサクラ』――高畑充希が描き出す“美しく生きること”の絶望感

2019.12.18

日本テレビ系ドラマ『同期のサクラ』公式サイトより


 私が会社に入ったのは、まだバブルの余波が残る景気のいい頃だった。親戚のコネなどもあって、そこそこの規模の会社に入れたのだが、同期は100人以上いて、新人研修が終わる頃には、いくつかのグループができ上がっていた。

「バブルの余波」と書いたが、あの頃の新卒者は、私から見るとちょっと浮かれてるような人が多く、私はどのグループにも馴染むことができなかった。言ってしまえば、「浮いていた」わけだ。

 高畑充希が主演を務めるドラマ『同期のサクラ』(日本テレビ系)が話題だ。大手ゼネコン・花村建設に就職した北野サクラ(高畑充希)と、4人の同期たちによる、10年間の出来事を描いた物語。見ていると、この10年間で日本に起こった出来事を振り返ることができるような作りになっている。

 見どころは、どこまでも真っ直ぐに自分の意見を貫こうとするサクラと、そんな彼女の姿に共感し、強い絆を作っていく同期のメンバーとの姿だ。

 会社員時代、同期の中で浮いていた自分から見れば、なんだか羨ましい話でもあるし、ちょっと古傷が痛むような感覚を覚えなくもない。もちろん、私は別にサクラのように正しいことを堂々と主張していたわけではない。ただ、何か他の人たちとは違う「こだわり」のようなものがあって、それがちょっとズレていたのかなとは思う。

 ドラマの方は「自分が正しいと思ったことを貫けば道は開ける」というような、単純な話では終わらない。同期の面々が、それぞれの部署で苦労し悩んでいくように、サクラにもまた苦難が訪れる。

 ある時は閑職に追いやられ、またある時は子会社へと出向させられる。まあ、それが現実というものだろう。第8話では、夢であった故郷の島への橋を架けられないこと、そして心の支えであった祖父(津嘉山正種)が亡くなったことなどが重なり、サクラの心はポッキリと折れてしまう。

 一度は気力を失くし、荒んだ生活を送るサクラだったが、仲間たちの励ましもあり、ようやく前を向こうとする。しかし、そんな矢先、サクラは事故に遭い、9カ月もの間眠り続けていた。今までの物語は、そこにお見舞いに来る会社の人たちが回想するスタイルで進んでいたのだ。

 このドラマが多くの人の共感を呼んでいるのはなぜだろう? 「忖度」という言葉が流行語になるほどの世の中で、そんなことを一切考えずに生きているサクラに憧れを感じるのだろうか。確かに、不器用ながら、夢に向かって一心に進むサクラの姿は美しいし、痛快だ。でも、そんな設定だけで、多くの人の心を掴んでいるわけではない。そこには、「高畑充希」という女優の存在が大きいと思うのだ。

 よく言われるように、この作品は、2017年に放送された『過保護のカホコ』(日本テレビ系)と通じる部分がある。脚本の遊川和彦と、主演の高畑充希のコンビ、どこか堅物で融通の利かない主人公など、共通点はいくつも感じられるだろう。ただ、個人的にこれら作品の肝となっているのは、高畑充希の中にある「違和感」だと思うのだ。

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