八百長サッカーを自然に演じろ!? 斬新過ぎるスポーツマンガ『ピッチディーラー ー蹴球賭場師ー』レビュー

2017.06.18

『ピッチディーラー ー蹴球賭場師ー』(原作:昌子春、漫画:外本健生/講談社)

「ヤングマガジン」(講談社)で連載中のマンガ『ピッチディーラー ー蹴球賭場師ー』(原作:昌子春、漫画:外本健生/講談社)の第1巻が6日に発売されました。サッカーマンガっぽく見えてそうじゃない、でもやっぱりサッカーマンガな異質の作品となっています。

“ピッチディーラー”とは、賭博の対象となる試合――もちろんtotoではありません、もっとアンダーグラウンドなやつです――胴元の描くシナリオを実行するサッカー選手たちのこと。たとえば「2-0で負けろ」と言われたら、自然にチームメイトからも怪しまれることなくわざと負けるように試合を動かしていきます。見返りには莫大なお金が。

 主人公の新堂龍司は、プロデビューしたばかりの天才ゴールキーパー。前期ぶっちぎりの強さでJプレミアリーグを連覇した「東京VERSUS」所属の期待の星です。VERSUSには新堂の他にあと3人のピッチディーラーが在籍。

 日本を代表するプレースキッカーの名手MF・佐々木武尊、W杯得点王でコロンビアの至宝の超人FW・ハルク、VERSUSのキャプテンで世界も注目するビルドアップの達人CB・滝幸次郎。彼ら4人が超人的なテクニックで試合をコントロールしていきます。

 試合中、ハルクや佐々木はシュートをゴールバーに当てて、あくまでも不運で点が取れないとアピール。滝はチームの士気をコントロールしてわざとカウンターを食らうようにしたり。そして新堂は超人的な反応で一度シュートを防ぐも、“運悪く”こぼれ球が相手選手の方に転がっていき失点するなど神がかり的技術を発揮、といった具合です。

 試合を指示通り成功させると、貢献度に応じてお金が配当されていたのですが、ある試合では1億円を4人で山分けしていました。

 ここでおそらくサッカーファンなら誰しも突っ込みたくなるのは「そんな超絶テクあるなら普通に稼いだ方がよくね?」ってことですが、現実のJリーグではトッププレイヤーで年俸1億超えするかどうかといったところなので、1試合で数千万円の報酬というのは魅力的でしょう。

 しかし作中登場するのはメッシもビックリの超絶技術をもった選手たち。彼らがどれほど海外で通用する設定なのかはわかりませんが、「W杯得点王」と明確に経歴が書かれているハルクをちょっと現実の選手と重ね合わせてみましょう。

 10年のW杯で得点王となり、全盛期を過ぎた後に日本にやってきたフォルランはその時年俸が6億でした。また14年のW杯の得点王で、ハルクと同じコロンビア人のハメス・ロドリゲスは様々な噂がありますが、年俸はおよそ9億6,000万円程度とのこと。ちなみに最近話題の中国では、欧州で活躍した選手が年俸15~20億程度もらっているとも。このレベルの腐るほど稼いでいる選手が1試合数千万円程度で危ない橋を渡るか? とちょっと思ってしまいます。

 しかし、主人公の新堂はお金が目当てじゃありません。幼いころに死んだ父親の仇を追っていくうちにピッチディーラーを集めている組織に出会ったので、組織に近づくためにプレイに加担しているかたち。ここら辺は読者にツッコむ隙を与えない名采配ですね。

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