三本コヨリ『女子高生のつれづれ』夢なんてない露骨な女子高生の日常会話

2017.05.05

 女子高生の日常というものは、夢がないようで夢がある。

 いつの頃からか、日本人がみんな大好きになった女子高生。その存在に人は様々な夢を描くものです。でも、実際の女子高生というものはガサツだったり、いい加減だったり、男子よりも露骨に欲望をむき出したり。清純・純潔・癒やしなんてものは、存在しません。

 ところが、この三本コヨリ『女子高生のつれづれ』(徳間書店)は、そうした女子高生の露骨で夢のない日常を描くことで、読者に新たな夢を持たせようという、新たな戦略で攻めてきているのです。

 女子高生の日常といえば、こちらの単行本に推薦文も寄せている鈴木健也氏の『教えてギャル子ちゃん』(KADOKAWA)があります。でも、ギャル子ちゃんで描かれるのは本質的にファンタジー。対して、三本氏は写実的な絵柄で、より現実的な女のコの会話を横で聞いているようなスタイルで作品を描いています。

 つまり、教室で「今日、生理でつらいわー」みたいな露骨な会話を、偶然耳にしてしまった時に感じる気持ち。女のコのヒミツを知ってしまった感と、リアル過ぎる言葉から受ける女のコに対する妄想が壊れていく感。それらが混じり合った、新たな興奮。まあ、そんなものが合わさっているというわけです。

 物語の舞台になるのは、偏差値はそこそこっぽい共学校。そこで、普通っぽい由子、ギャルだけどマジメな円香、アホの子な明音の、日常会話が描かれていきます。

 描かれるのは、ホントに休み時間や放課後の、のんべんだらりとした日常の会話だけ。でも、そこは女子高生。女のコだけが集えば、会話は色気もなく露骨そのもの。

「おしっこって我慢すると気持ちいい」

 ただ、それだけの会話に一話を丸ごと費やしたりするのです。

 作品の構成として、基本ワンテーマの会話で一話になっているので、より日常感が伝わってくるわけですが、心底どうでもいい会話のハズなのに、ヒミツを覗き見た感があります。

 棒アイスを食べるだけで、舐めるか否か。その舐め方も下から舐めるか、むしゃぶるか。それを「なんかエロい」とか言い合って盛り上がっているワケなのです。かと思えば、互いに履いているパンツについての批評で盛り上がるエピソードも。

 ともすれば、ギリギリエロのシチュエーションになりそうなところですが、この作品は、そちらに振ることを避けています。あえて、それを避けることで、女子高生の生々しい日常が余計に明らかになっているような。

 つまり、興奮するのではなく、ヒミツを見てしまったなんともいえない気分を味わうのが、この作品の楽しみ方なのです。

 夢がないリアルに触れると、かえって興奮してしまうのって、なんなんでしょうねえ。
(文=大居候)

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