“脳トレ”ゲームに逆風か!? 脳に良いかどうかは「証拠不十分」

2016.11.13

 日本でもかつてかなりの人気を誇った“脳トレ”ゲームだが、その時期にこれらのゲームにハマった人たちは、本当に頭が良くなったのか? あるいは認知機能の低下を実際に食い止められているのか? これら“脳トレ”ゲームの効果について疑問の声が上がっているようだ。

「NPR」の記事より。

■“脳トレ”ゲームの効能は「証拠不十分」

 先の10月17日に学術誌「Psychological Science in the Public Interest」で発表された論文は、かつて“脳トレ”ゲームにハマった体験のある向きにとっては、かなりショッキングな内容かもしれない。“脳トレ”ゲームが「脳にいい」という確実な証拠はないというのだ。

 研究では、これまでに発表された130以上の“脳トレ”の効果を証明したとされる学術論文を、7人の学者が手分けをして2年がかりで詳細にレビューした結果が報告されている。その結果は“証拠不十分”だ。これら“脳トレ”ゲームが脳の認知機能を向上させていると主張するには根拠が薄弱すぎるということである。

「(この結果は)残念です。いくつのか“脳トレ”ゲームをプレイすることで劇的に認知能力が向上するという実験結果は素晴らしいものですが、それが現実の生活でどのような働きを及ぼすのかを客観的に測定することも、提示することもできていないのです」と「NPR」に語るのは、論文主筆であるイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校のダニエル・サイモンズ教授だ。つまり何度もプレイをするうちにゲームの中では優れた認知機能を獲得するが、それが現実の世界の課題で活かされるものなのか、そしてそもそも総合的な認知機能が本当に向上しているのか、はなはだしく疑問であるということだ。

 レビューした学術論文の中には、アメリカの人気のブレインゲームサイト「Lumosity」の効能を実証した論文もあったということだ。しかしながら、ほとんどの学術論文で、実験参加者が少なすぎたり、「プラセボ効果」を無視したりと、客観性と再現性が低い実験が行なわれており、実験結果に疑問が残るものばかりであったという。

 実験の時点で“脳トレ”ゲームをずっとやり続けているグループと、何もしていないグループに同じ認知テストをやらせてみれば、意欲と集中に勝る現役“脳トレ”ゲーマーのほうがおおむね好成績を残しそうな印象はあるだろう。しかしそれは本当の“実力差”ではないということになる。

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