『部活、好きじゃなきゃダメですか?』(いづみかつき) あまりにも出オチすぎる!
2016.11.03
いづみかつき『部活、好きじゃなきゃダメですか?』(スクウェア・エニックス)は、すべてが出オチ感満載。勢いだけで突っ走ろうというセンスが光る作品です。
物語は3人の男子、西野(クズ)・大山(バカ)・窪田(まとも)の会話で進行します。3人は、いずれもサッカー部に所属している男子です。中でも西野と大山はサッカーのセンスが光る男子。なのに、揃いも揃って努力とか根性とかは大っ嫌い。サッカーもまったく真面目にやっておらず、毎日どうやって部活をサボるかしか考えていません。
そこまでやる気がなければ、やめればよいのですが、顧問が怖いので、とてもやめるとはいえずに、ダラダラと練習をしているのです。
そんなヤツらだから、常に本音で語ります。
「現実で部活をやっているヤツの90%は、その日どーやって部活をサボろうとしか考えていない」「顧問なんか死んで欲しいと思っている」さらには「現実世界に女子マネなんているはずがない」とまで断言するのです。
そんな、運動系の部活に所属してしまった経験がある男子ならば、必ず体験したであろうことを、1話につき1テーマで綴っていくのです。
実はレギュラーだったり、それなりに実力があるのに、真面目に練習をする気がない男子というのは、ごくフツーに見られた光景のハズ。だって高校生くらいになったら、どんなに頑張ってもプロになったり、オリンピックに出場するレベルには達していないことは、自ずとわかるもの。真面目に部活に打ち込んでいたとしたら、単なる筋肉バカでしょう。
その点は共感できる3人組ですが、次第にネタが苦しくなったのか、女子マネのネタが登場する回からは、なぜか妙な方向に突っ走り始めます。他校との練習試合で見かけた女子マネを「女子マネなんて、現実にいるはずがない」と決して認めようとしないんですから……。
いやいや、文化系の部活をしていた人にとっては、運動部=リア充という意識があるのですが、運動部もけっこう大変なんだな……。
というわけで、1巻完結の本作品は、最後までなんとか部活ネタで突っ走り続けます。後半になると、そろそろネタが切れてきたのか苦しさを感じます。苦しさはあるけど、なんとか面白い話にしなくてはならないという作者の苦労も伝わってきます。
そうした中で光るのが、体育の授業の回。授業でサッカーをやる気になった3人は、普段は部活をサボっているにもかかわらず、本気を出しまくります。そうそう、なぜか体育でサッカーやバスケなど球技となると、普段は「だりー」とかいってる、それらの部活に所属しているヤツらが本気を出すのは確かに見たことのある光景です。筆者が見たような光景は、きっと世界のあまねく学校で起こっていたことなのかも知れません。
と、まあ読んでいた時は面白かったのに、なぜか文章にすると苦しさを感じる本作。出オチの勢いがあるのは確かですから、その勢いのまま最後まで読んでしまうのがよろしいでしょう。
(文=大居候)