セルアウト批判と中二病克服問題が、ちょっとマジメに語られた『ラブライブ！サンシャイン!!』第5話レビュー

『ラブライブ！サンシャイン!!』第5話はヨハネこと善子ちゃん回。

　入学早々、みんなの前で「私は堕天使ヨハネ！」「おまえたちはリトルデーモン！」みたいな自己紹介をしてしまい、以来学校に来れなくなっちゃった善子ちゃん。3話のAqours初ライブには変装してきていたようで、スクールアイドルには興味がありそうでした。

　そんな善子ちゃん。実はニコ生的な動画配信サイトでは人気者。「堕天使ヨハネ」としてブイブイいわせているのでした。

　しかし、高校1年生にもなって「ヨハネ」であることに、善子ちゃん本人も悩んでいる様子。生配信が終わると「いるわけないでしょ、そんなもーん！」「リアルこそが正義！　リア充に、私はなる!!」と、ベランダから絶叫したりしています。隣人からしたら、ちょっとアレですよね。通報案件ですよね。

　今回は、そんな善子ちゃんが「ヨハネ」を卒業し、津島善子としてAqoursに加入する話……かと思ったら、ちょっと違いました。

　前回、ルビィちゃんと花丸ちゃんの1年生コンビを加えて5人になったAqoursですが、ネットでの人気投票では4,000位台後半をウロウロ。花丸ちゃんがカワイイと一部人気のようですが、順位は伸び悩んでいます。

　千歌ちゃんは、善子ちゃんに「ヨハネ」のままスクールアイドルをやろうと誘います。堕天のクセが抜けないなら（堕天のクセって！）、そのままみんなで堕天使アイドルになろうと。

　そう思い立つが早いか、みんなでゴスロリ衣装に身を包むことになりました。すると、順位は急上昇して900位くらいに。特に、ルビィちゃんのミニスカートが好評です。

　これを見て、激怒したのがルビィ姉で生徒会長のダイヤちゃん。

「ハレンチ！」

　と言い放つだけでなく、「こんなのは一時的な人気だけ」「キャラが立ってないとか、そういうことを考えるな」「本気で目指すなら云々」と、怒涛のセルアウト批判を繰り広げます。アイドルかくあるべし、という理念思想については、やっぱりダイヤちゃんがいちばん深く考えている模様。そうとう好きだったんですね、スクールアイドル。

　で、善子ちゃんはボッコリと落ち込み、堕天使を封印することにしました。

「やっぱり高校生にもなって通じないよ」
「なんかスッキリした」
「今度こそ、普通の高校生になれそう」

　こうして、善子ちゃんはスクールアイドルを目指すことを辞め、ヨハネからも卒業し、普通の高校生として生きていく……のかと思ったら、それも違いました。

　千歌ちゃんは、せっかく堕天使セットを押し入れの隅に仕舞い込み、中二病を克服した善子ちゃんを、この期に及んで「堕天使ヨハネちゃん」と呼び、再び「スクールアイドルに入りませんか？」と勧誘するのでした。

　走って逃げる善子ちゃんを、ほかのメンバー5人が数キロメートルにわたって追いかけます。そして追いつくと「いいんだよ！　堕天使で！」「自分が好きならそれでいいんだよ！」と激しく詰め寄るのでした。

　千歌ちゃんは「自分の“好き”を迷わずに見せること」こそがスクールアイドルだと言い、それに納得した善子ちゃんは、堕天使ヨハネとしてAqoursに加入することになります。

　これ、ちょっと乱暴な感じがしたんですね。

　ここまで、梨子ちゃんにしろ花丸ちゃんにしろ、当の千歌ちゃんにしろ、「今までの自分を変えたい」という動機でスクールアイドルの世界に足を踏み入れてきました。ところが、善子ちゃんは「変えたかった自分」そのままで加入することになるんです。

　スクールアイドルというものの美徳のひとつに、「スクールが終わったらスクールアイドルも終わる」という“期間限定”の要素があると思うんです。有限の時間だからこそ、その活動を通して人間として成長する姿が尊いのではないかと。

　花丸ちゃんによれば、善子ちゃんは幼稚園のころ「私は天使」「天使になりたい」といつも言っていたそうです。ということは、天使になれないことを自覚したあとの、逃げ道としての「堕天使」だったということです。とすれば「堕天使ヨハネ」という存在は、善子ちゃんにとって、いつかは脱却しなければならない自縛だったはずなんです。

　善子ちゃんの「ヨハネ」に関しては、問題を先延ばしにしているようにしか思えないんですよね。善子ちゃんがヨハネとして輝けば輝くほど、堕天使から人間になるのが難しくなるような。結果、高校を卒業して大学なり就職なりとなったときに「来年ハタチなのに、ヨハネって……」と悩みそうな気がして、心配です。まあ、見てる分にはカワイイからいいんですけど！
（文＝新越谷ノリヲ）