米ホラー映画『The Forest』監督、樹海の恐怖を切々と語るも「という設定」「という宣伝」「話題作りに余念がない」

2016.01.24

YouTube『The Forest』公式トレーラーより。

 国内屈指の自殺の名所といえば、青木ケ原樹海。富士山の麓に位置することから富士の樹海とも呼ばれ、多くの心霊番組などにも登場してきた。その青木ケ原樹海を舞台にしたのが、アメリカ映画『The Forest(原題)』だ。本作が初メガホンとなる監督、ジェイソン・ザダが映画のロケ地について、いかに怖かったかを明かしたのだが、節々に見られる胡散臭さと突っ込みどころに、日本からは「広報活動」との指摘が上がっている。

 青木ケ原樹海を舞台にした映画は決して目新しいものではない。いくつか紹介すると、萩原聖人、池内博之、津田寛治、井川遥がそれぞれ主演を演じる4つの物語が交錯する『樹の海』。04年の「東京国際映画祭」において日本映画・ある視点部門、作品賞・特別賞を受賞した良作のはずなのだが、個人的には途中、駅(ホーム)のシーンで電車にカメラマンが映り込んだ気がし、そこから興醒めした記憶しか残っていない。カメラマンではなく、幽霊だったら大きな話題になったはずだ。ちなみに、ホラー映画ではない。

 次に、石原慎太郎氏が48年ぶりに映画出演することで注目が集まった、13年公開のタイトルずばり『青木ケ原』。原作も石原氏の短編小説『生死刻々』(文藝春秋)の一編「青木ケ原」、製作総指揮も石原氏と、石原氏一色の同作は恋愛映画でありながら、ガチ映り込みで話題を呼んだ。問題のシーンは、木の陰から黄色い服(のようなもの)がひらりと映るというもの。監督の新城卓氏も「これは間違いなくスタッフでも演出でもありません」「編集作業で気づけばカットしたんですが」と述べたが、世間からは「宣伝」「公開してるなら確信犯」「ステマ乙」などの声が上がってしまった。しかし、その編集が功を奏したのか、「第23回 日本映画批評家大賞」編集賞を受賞。

 さらに、4月に本公開予定、渡辺謙も出演するガス・ヴァン・サントの最新作『追憶の森』しかり、青木ケ原樹海を舞台にした映画はいくつも存在。しかし、どの作品も現場が怖かったという話は耳にしない。無論、しないだけで何かしら起きているのかもしれないが、仮に起きていたら格好のネタのため、舞台挨拶などで明かしたりするだろう。

 ただ、青木ケ原樹海で行方不明になった双子の姉を探しに訪れた妹・サラが、死者の魂に襲われるという、わかりやすいホラー映画『ザ・フォレスト』の監督であるジェイソン・ザダは、同地での撮影についてこう語る。

「プロダクションが(青木ケ原樹海を)ガイドする人物を用意してくれたんだが、そいつが悪夢を見たらしく、急遽キャンセルした。続く2人目も、『母親が、俺が(青木ケ原樹海で)死ぬ夢を見た』とキャンセル。3人目は、衛星携帯電話で小まめにプロダクションと連絡を取りながら、やっと連れて行ってくれたよ。でも、迷わないためのロープが張り巡らされた場所に辿り着いた途端、ガイドが『陽が沈み始めたから、今すぐ戻ろう。もし、あなたがここに残ると言うなら、管理者に所在地を伝えなくてはいけない』と脅されたんだ」


 日が暮れたら、標高1,000m程度に位置する青木ケ原樹海から下山するのは実に当たり前の提案だ。それに、さも怖い場所のように言っているが、遊歩道もあり、ハイキング、ピクニック、キャンプと人気のスポットだったりする。また、ザダは「ぼくも製作過程で恐怖を感じるようになったよ。携帯で電話もできないからね」との恐怖も語っているが、近年はアンテナの設置などで通話はできるという。

 そんなザダに対し、「という設定」「という宣伝」「話題作りに余念がない」「広報活動がうまいこと」「樹海なんて散歩コースだろ。うそ臭い話だ」「祝ってやる」など、宣伝を疑う声が多数上がっている。宣伝かどうかはわからないが、ひとつだけ言えるのは、日本での公開が現時点で未定である以上、全くもって宣伝効果になっていないということだ。しかし、実にアメリカ人らしいおべんちゃらは嫌いではない。ホラー映画らしいシャワーシーンもあるようだし、レンタルされた際は観ることにしよう。

『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』を思い出しました。

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