シリーズお約束を覆す“肝っ玉母ちゃん”に視聴者大受け!『ガンダム Gのレコンギスタ』

2014.11.10

――毎日、何本ものアニメが目まぐるしく放送されている現代日本。これだけ放送本数が多いと、見るのだって一苦労……。そんな悩める現代オタクのため、「おたぽる」がオリジナル作品を中心にテレビアニメ・レビュー! これさえ読めば、気になるあのアニメのあらすじから評判までがまるわかり!!※本文中には“ネタバレ”が含まれていますので、ご注意ください。

■『ガンダム Gのレコンギスタ
第7話「マスク部隊の強襲」

ガンダム Gのレコンギスタ公式サイト内「Story」より。

【今週の極私的見どころ!】
 海賊部隊へのスパイ行為で祖国・キャピタルテリトリィに有益な情報を持ち帰ろうと画策するベルリ(CV:石井マーク)。しかし、彼の思惑など無視するかのように海賊部隊とキャピタルガードの戦闘は激しさを増す一方。海賊部隊の協力者を装うベルリは、ついに恩師・デレンセン(CV:小山剛志)をその手にかけてしまうのだった。へヴィな現実を突き付けられ、ショックを受けるベルリですが、はてさて今回はどんな展開が待ち受けているのやら……。

【今週のおすすめ度】
★★★★☆
(前回のあらすじはこちら

 キャピタルアーミーのマスク(CV:佐藤拓也)が、部下を集めて自分の出自を明かすところから今回はスタート。過去、賤民として扱われていたクンタラ出身という身分に驚く部下たちですが、彼らもまたクンタラ出身の被差別階級者たち。虐げられる者たち同士、結束を固めてやがてキャピタルタワーをも支配してみせると息巻きます。ほんの数秒の短いシーンですが、このやりとりだけで彼らの悲壮なバックボーンが伝わってきます。今回、ベルリたちを狙うのは彼ら。『ガンダム』シリーズならではの、それぞれの正義が激突する予感を憶えますね。

 そして、前回に引き続きキャピタルタワーに接続されている宇宙ステーション内は、ますます軍備が増強されている様子。キャピタルタワー運行長官であるベルリの母・ウィルミット(CV:田中敦子)は完全にないがしろにされているようです。

 そんな彼女ですが、自室に入った途端突然大笑い! 思わずギョッとしてしまいますね! ネットを見ると「何か思い出し笑いしたのか?」「特に深い意味はないのでは?」「発狂した?」など、多くの視聴者がこの演出に違和感を覚えた様子。僕としては、“長官という肩書が有名無実化し、国内がすっかり軍国化してしまい後戻りできない状況”と、それを止めることができなかった自分に呆れてしまったという意味の笑いなのでは、という説を挙げたいのですがいかがでしょうか?

 一方の海賊部隊は、戦艦・メガファウナのダミー風船を膨らませて、キャピタルアーミーの目を欺こうとします。そのもくろみ通り、電波攪乱性能のあるミノフスキー粒子が散布された地上の様子は、宇宙ステーションのクラウンからははっきりと目視できない模様。と、その映像を目撃したウィルミットは、「あそこにベル(ベルリの愛称)がいる!」と目をむきます。今回のママはいつもとちょっと何か様子が違いますね。じわじわと波乱を予感させる動きを見せます。

 さて、地上ではマスク率いるエルフ・ブルック部隊が出撃。対する海賊部隊には、アメリア宇宙軍のスルガン総監直属のMS・ジャハナム部隊が合流。前回は紫色の機体が登場しましたが、今回はザクを思わせるグリーン! こりゃかっこええ! アメリア軍のMSは、量産型のグリモアもそうですが、SF感を漂わせつつミリタリ風味な味わいもあるデザインの機体ばかりで、ガンオタ歴20年の自分としては、懐かしさ半分、新鮮味半分というところで非常に惹かれるものがあります! ……というか、海賊部隊は完全にアメリア軍の斥候部隊みたいな存在だと視聴者にバラしちゃっていますね。

 G-セルフ用の宇宙用バックパックがアメリア軍より支給され、今後の宇宙戦争に向けて期待感を煽りますが、事態は予想外の方向に動き始めます。精神障害を持つラライヤ(CV:福井裕佳梨)がG-セルフに親しみをみせることから、天才・クリム(CV:逢坂良太)は彼女をG-セルフのコクピットに乗せて操縦させるように仕向けます。その口ぶりや、ラライヤの反応から「催眠術を使ったのか?」と思わせますが、そのへんについてのフォローは一切なし! 考えるな、感じろってやつですね、きっと。

 その頃、キャピタルタワーでは大気圏突入用グライダーに乗り込んで、ウィルミットが脱出を図っていたのですが、その手段がとにかくアグレッシブ。キャピタルアーミーのベッカー大尉(CV:姫野惠二)に、「タワーの設備の点検に来た」とか言いながら、操作ミスを装いハッチを解放。さらに突然の異常事態にパニックになってしまったおばちゃんを装い、そのまま宇宙空間へダイブ! あとは首尾よく地球へ降下するだけ……と思いきや、宇宙服を忘れていることに気付いたり、コクピットハッチに頭をぶつけてみたりと意外なドジッ子ぶりを発揮。「ベルリママが死にそうでひやひやする」とネット上では、ママの無謀な行動に心配の声が。『ガンダム』シリーズの主人公のママはたいがい不幸な目に合うというジンクスがありますが、今回もそのパターンにはまってしまうのでしょうか……?

 今回のアイキャッチはマスクとクリムの二人。いつものように前衛的なダンスをみせてくれます。ちなみに、この舞踊の振り付けを考えているのは、富野由悠季監督の次女にしてコンテンポラリーダンサーの富野幸緒氏。意外なことにこれが初の親子共演とのことです。

 ということで、Bパートはマスク部隊との戦闘でスタートです。しかし、クリムはラライヤをG-セルフに乗せて、操縦させてみせます。普段は幼児のような言動が多い彼女ですが、MSの操縦はしっかりとできる様子。第1話ではG-セルフに乗っているシーンが描かれただけに、兵器に対する適正は特別なものがあったりするのでしょうか。それにしても意味深なのが、G-セルフを「これ、あたしんだよ」と言うラライヤです。色々と謎が多いG-セルフですが、かつてのラライヤはその全てを知っていたのでしょうか。謎が謎を呼びますね。

 なおベルリ君はちょうど食事の真っ最中。乗る機体がない彼は、アイーダ(CV:嶋村侑)の指示のもと、ジャハナムで出撃することになりました。その時、アイーダは「ベル!」とベルリを愛称で呼んでいましたが、徐々に彼女の中でベルリに対するわだかまりが解けてきている様子がうかがえます。カーヒルを殺した彼を許したのか。それとも、自らの手でデレンセンという大切な恩師を殺してしまった彼にシンパシーを感じるようになってしまったのか。それは誰にもまだわかりませんが。

 再びカメラは大気圏に突入するウィルミットに。酸素マスクとブランケットという簡素な防備で大気圏に突っ込む彼女ですが、その瞬間に「ベルが好きなバナナとシナモンのビスケットを忘れた!」と、てんで場違いなセリフをつぶやき、視聴者を唖然とさせます。アグレッシブ母ちゃんにみんな大受け! う~ん、この母ちゃんは死亡フラグをバキバキに折りそうな予感です。

 地上では海賊部隊とマスク隊の戦闘が開始。マスク部隊の攻撃がダミー風船にヒットした際の発光にラライヤが反応。前線に身を躍らせますが、マスクの攻撃を受けて海へ墜落。追撃から守るべくクリムのモンテーロが飛び出し、因縁の戦い再びとなります。ジャベリンで迫るモンテーロに対し、マスクのエルフ・ブルックは足に仕込まれた特大ビームサーベルで反撃。全く予測のつかない攻撃に、「なんとぉー!」とクリム。一方、海に沈むG-セルフですが、ベルリのジャハナムが救出。浜辺で乗り換えますが、ここでスローモーションで描かれる鳥を見たラライヤが「お目目が赤いんだ」と意味深なセリフを呟くシーンが。スローモーションで鳥が飛ぶシーン、というと初代『ガンダム』のララァとアムロの出会いのシーンを思い出しますが、このラライヤのシーンも何かの伏線だったりするのでしょうか。

 さて、戦闘はますます混戦の度合いを深めていきます。海賊部隊、マスク部隊ともにMSが次々と撃墜。戦果を上げて出世しようと息巻くエルフ・ブルック隊の猛攻の前に、アイーダの乗るG-アルケインも追い詰められていきます。と、ここでビームサーベル二刀流のG-セルフが登場! ヒーローらしくアイーダを救出します。そして今回もG-セルフの謎機能が出現。胸部あたりから不可思議な光を放ち、マスクを退けようとします。しかし、徐々に追い詰められていく海賊部隊。撤退も難しい……というタイミングで、なんとアメリア軍の大型MA・アーマーザガンが出現! 超強力なビームでマスク部隊を追い返すことに成功。ウィルミットもベルリと合流すべく地上に到達、というところで第7話はおしまいです。

 怒涛の展開をみせた今回ですが、やはりMVPはウィルミットでしょう! 最初は暗殺されるか、巻き込まれて死んじゃうフラグが立ちまくっていた感のある彼女ですが、第7話ではそんな予想をぶっちぎるような行動力を発揮。意外にも「母は強し」を地でいく肝っ玉母ちゃんということが発覚しました。今後のキーキャラになることは確実です。

 また、味方として登場したMA・アーマーザガンの今後の活躍も気になるところ。『ガンダム』シリーズにおいて、巨大なMAというと主人公の強敵として登場するパターンが多いのですが、味方として登場するのは非常に珍しいパターンです。『ガンダム』シリーズのお約束と裏切りの絶妙なバランスが非常に楽しいエピソードでしたね!

 なお今回の次回予告の決めゼリフは、スマホ世代に向けた「歩きながら見るなよ」という富野監督からのありがたい注意でした。
(文/受動 明日)

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