今回はかなり辛いというか、まだ見えていなかったそれぞれの過去がほんのり透けて見えた回だった。見えたからこそ、誰かの言葉が突き刺さってしまう。
冒頭、1997年のローザンヌからスタートする。体操の大会をまだ幼いレオが見ておりそこには城太郎も出場している。「サムライ」と呼ばれる城太郎の後ろ姿には、見えるはずのないオーラのようなものが見え、レオはその気迫から目をそらすことが出来なかった。それが、二人のはじめの出会いだったのだ。
レオは今、城太郎の近くで、彼にできることがないかと考えていた。アラガキマーク2完成まであと少し。試合までもあと少し。次の試合でこのアラガキマーク2が成功すればそのあとのアテネにも続く大きな足掛かりとなる。城太郎も天草も気合が入ってる。
一方そのころ、池袋の街ではフクロウのフクちゃんが飼い主の元から逃げ回っているという報道がなされており、玲もどこかで見かけないかと辺りを見回していた。ビッグバードは同じ鳥としてあちらの方が注目されているのが悔しい様子だ。
練習に明け暮れるまま、残り一週間となったところで城太郎はアラガキマーク2の着地に無事成功。あとは本番までに構成の洗い直しや精度を高めることが必要だ。レオは城太郎の成功を誰よりも喜ぶ。その喜びっぷりに城太郎も感謝の言葉をかける。
レオはただ役に立ちたいだけ、というが実際レオがいなかったら城太郎はもう体操を引退してしまっていたかもしれないのだ。そのおかげで城太郎は体操と向き合うことが出来た。引退を選ばずここまできたらからアラガキマーク2を完成させることもできたのだ。
レオは城太郎の体操を見るとワクワクして勇気がもらえる、と伝えてくれる。城太郎もそれに対し、レオに本当はバレエを続けたいのだろう?と自分もレオがバレエを続けられるために役に立ちたい、と伝える。ずっと真剣にバレエに向き合っていただろうことは彼の体の動きを見ればよくわかる。
もし忍びからバレエに戻るなら応援したい。ケガがあるなら城太郎も通っているブリトニーの鍼だってある。それに周りのみんなもきっとレオを応援してくれるはずだ。
そんな真剣な話をしていると、突然目の前に巷で噂のフクちゃんの姿が。なんと足がフェンスに引っ掛かってしまって飛べないようだ。
城太郎は必死にフクちゃんの救出に向かう。フェンスなんて登ったら落ちたりして体を傷つけないだろうかとハラハラしたが、意外にもあっさりとフクちゃんを解放してあげることが出来た。よかったよかったと歩き始めると、城太郎は何もないところで足をひねってしまう。
レオは、小さなころから天才と呼ばれていた。彼が踊ればみんな目を奪われる。小さいころはそれでよかった。だが、大きくなるにつれてどんどんその目線が怖くなってきた。少しダメだと今日はイマイチ。普通の特待生と変わらない程度といわれ、ハードルは上がっていく。できて当然、俺たちとは違う。いいよな、天才くんは。などと努力しているのを見てもくれないで簡単にできるのだと思われる。
常に「もっと、もっと」と請われることに疲れたレオはあるとき、日本の忍者のサイトを見て「僕も忍びたい」と思ったのだ。
城太郎の足は軽い捻挫だった。練習メニューの調整などは必要になるが、どうやら城太郎も天草も試合を棄権するという考えはないようだった。だがレオは、なんとか大事をとって出ない方がいいのでは、とずっと心配顔。
怪我がまったくないことなんて、プロの世界ではありえないことで、上手く付き合っていかなくては立ち行かないのだ。
玲も、怪我をしたことで怒ってはいたがそれで城太郎が棄権するなどとは露にもおもっていないようだった。皆のそんな反応を見て、レオはある考えを行動に移す。
それは、城太郎の夢枕に立つこと。寝込んでいるところにバレバレの隠れみの術をつかって大会は棄権しろ、ということを植え付けようと思ったようだが、城太郎にすぐさまバレてしまう。レオは、城太郎の失敗するところなど見たくないのだと心から願うように、城太郎に訴える。
だが、城太郎は簡単に「失敗するかもしれないな」と軽く応える。だが、失敗はしてもダメにはならない。城太郎は強くそういった。ずっと城太郎はがむしゃらに練習すれば強くなれると思っていた。だが、彼は自分が一人ではないことに気付いた。レオや玲をはじめとした色んな人に助けられている。そのおかげで自分は体操ができるのだ。そのために自分でできることは全てやりたい。その先にみんなの笑顔があるから。だから二度と引き下がらない。それが城太郎の体操なのだ。
そう思っているからこそ、なぜレオがここまで城太郎の怪我を心配しそんなに怖がってしまっているのかが城太郎にはわからない。城太郎はレオがなぜ忍者になろうと思ったのかわからない。だが、才能があるレオがなぜやろうとしないのかがわからないのだ。だがジョーは自分にはできない、と繰り返すばかりだった。
レオが城太郎を初めて見た日。1997年のローザンヌ。サムライオーラが見えた城太郎の演技の直前、彼の元に妻の知世が交通事故にあったという知らせが入った。天草はすぐにチケットをとるから試合には出ずにすぐに帰れといったが、城太郎はそれを断り、試合に出た。
だが、2回目のアラガキに挑もうとしたときに失敗してしまったのだった。帰国し、知世を失った城太郎は、彼女が出ていたビデオを見返す。その中で彼女は「大変なこともある。うまくいかないこともある。それでもだって好きになっちゃったんですもの。関係ないわ、そんなの」とあっけらかんと答えていた。
その言葉を励みにして、城太郎はそのあとの生活を乗り越えてきたのだ。玲も「お母さんがいなくても頑張る」と笑ってくれた。だから城太郎は頑張れるのだ。
それができないレオは荷物をまとめ、荒垣家を出た。城太郎は玲にレオについての話をし、自分はレオと作ったアラガキマーク2を成功させることを誓う。玲もレオなら大丈夫だと彼を信じることに決めた。
二人のレオを信じる気持ちがちゃんと彼に届きますように。そして、もう一度城太郎の体操がレオの勇気になればいいのに。そう願わずにはいられない。
TVアニメ『体操ザムライ』それぞれの過去が見えて胸が苦しくなる第9話のページです。おたぽるは、アニメ、作品レビュー、体操ザムライの最新ニュースをファンにいち早くお届けします。オタクに“なるほど”面白いおたぽる!
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