TVアニメ『魔女の旅々』旅は美談だけではない…重い話の2本立てだった第3話

TVアニメ『魔女の旅々』公式サイトより

 今回は短いストーリーが2本立て。だがしかし、この2本のお話がどちらもちょっと後味が悪い。旅の話には綺麗ごとだけでは済まされない、その地方の、その人物の闇に触れてしまう機会も当然あるのだということをはっきりと思い出させてくれる。

 旅を続けるイレイナは、途中広大な花畑にたどり着いた。その中には一人の少女がいたが、彼女はこの花畑の管理者でも何でもなく、ただ花を愛で太陽を浴びているのだという。

 自然にこれだけの花が大量に咲いていることに感心するイレイナだが、長くとどまれる場所でもないため、すぐに去ろうとする。すると、その少女はイレイナに花束を運んでほしい、と頼んでくる。

 誰に、という明確名目的があるわけではなく、ただその花が美しいことを誰かに伝えてもらうことが重要なのだ、という彼女の物言いを不思議に思いながらも、これだけきれいな花なのだから、と宣伝することと理解し、花を好きそうな人に必ず渡すことを約束し、イレイナは旅を続けることに。

 しばらくほうきで空を飛び続け、見つけた国へ入ろうとしたイレイナを、門番に止められてしまう。 理由もわからずぶしつけに引き留めようとする門番にイラつくイレイナ。だが、門番はどうやらイレイナがもっている花束が気にかかるようだ。理由も話さず、とにかく花束を渡せと突っかかる門番を先輩のような男が窘め、変わってくれる。

 どうやら先ほどの門番は、最近妹が行方不明になり言動が多少おかしくなってしまっているようだ。

 さらに交代した門番が、イレイナの持つ花束がこの国では持ち込むことができないものであることを教えてくれる。この花束には魔女には効かない毒があり、人間の心を狂わせる魔法がかけてあるというのだ。イレイナもこれを聞いてまで反発する理由はない。花束を渡し、国に入りその日の宿を探し求めた。

 彼女は宿でいつもの日記を書きながら愛読書であった『ミケの冒険譚』を思い出していた。そこにはミケが旅先で出会った奇妙な植物について語られたものもあったのだ。植物が魔力を持ち、自我を持ち、人間を襲う、というような……。

 翌日、また別の国に向かう途中イレイナはまたあの花畑に立ち寄った。するとそこには、昨日イレイナに対して突っかかってきた門番がいた。イレイナが昨日もっていた花束を包んでいたものが妹の服だと気付き、ここに来たのだそうだ。彼は大きな花に取り込まれているように見えるが本人は気付いていない。

 花を妹と思い込み、花をほめ、一体化してしまっていた。もう、イレイナの声は届かない。そう判断したのか、イレイナは黙ってその場から飛び立っていった。きれいな花にはとげがある。美しい花が綺麗に咲き誇るには養分がいる。ゾっとするエピソードだ。

 二本目は、また毛色が違う話。移動中のイレイナを呼び止める男がいた。イレイナはほうきを止め、呼び留めた男の前に降り立つ。彼は本物の魔女が珍しいのか、賞賛の声を浴びせてくれる。それに気をよくしたイレイナは彼に興味を持ち、彼が何をしていたのか質問をする。

 彼の名前はエミル。今彼は幸せ探しをしていたのだという。これだけ聞くとちょっとやばいやつかな、と思わないでもないのだが、どうやら人や動物が幸せだと感じた瞬間を魔力に変えて瓶に貯めているのだという。

 それというのも、好きな子に集めた幸せを見てもらいたいからだそうだ。彼の想い人は彼の家で働く使用人なのだそうだが、いつも忙しくて元気がなさそうに見えるので集めた幸せを見せてあげたいというのだ。

 イレイナは過去に読んだ物語で、それに似た話を見たことがあることを思い出した。結末は忘れてしまっていたが、病気になった妻の為に夫が世界中を旅してみて景色を魔法で複製して見せてあげるというもの。エミルはその話の妻もきっと大喜びしたに違いない、と自分の作戦も必ずうまくいくと信じて疑わない。

 とにかくイレイナも一緒に彼の家に招待されることになる。エミルの家はこの村の村長らしくのどかな村の中で一番大きな家だった。昼食に招かれたイレイナは家の中でエミルの想い人であり使用人のニノと対面する。彼女は東の国の出身者に共通した容姿をしていたために、出身を訪ねると、確かに東の国の出身であると答えた。エミルの父が東の国に行った際に「拾ってきた」そうなのだ。その表現に違和感を持つイレイナだったが、エミルとニノはそのまま昼食を作りに台所に引っ込んでしまう。
 
 イレイナは昼食ができるのを待つ間、なぜかエミルの父、この村の村長と二人きりで待機することに。村長は上から下までジロジロとイレイナを見定めるような視線で眺めてくるような男だ。間が持たず、イレイナはニノとは東の国で出会ったのですか? という質問を投げてみる。

 すると村長は、ニノを奴隷として購入したのだということをなんの躊躇いもなく話し出す。エミルの母がいなくなり、家事が回らなくなった際にちょうど見つけたという。顔もいいし、家事も多少はできる、彼にとってはお買い得な買い物だったようだ。

 少なめがいい、というイレイナの要望も無視されかなりガッツリ系のランチを頂いたイレイナ。後片付けをしてくれたニナが、途中食器を割ってしまうハプニングが起こる。

 その失態を村長は烈火のごとく怒り、暴力をふるおうとする。ニノの怯え方は尋常ではなく、日常的に体罰のようなものが行われていることが見て取れる。だが、イレイナその様子を見かねてニノが割ってしまった食器を魔法で元通りに戻してやる。

 村長も、客人にまずいところをみられた、と体裁を取り繕うが、嫌悪感は消えない。

 叱られ、落ち込んでいる今だからこそ、ニノにプレゼントを渡す時では? とイレイナはエミルに助け船を出す。エミルも張り切って、自分が集めた幸せを詰めた瓶を彼女にプレゼントする。瓶を開けると、エミルが見つけてきた様々な幸せな瞬間が彼女の前に現れる。その幸せな空気を見て、ニノはただただ涙を流す。エミルは泣いているニノを満足そうにそっと抱きしめるのだった。

 イレイナは夕刻、二人の元からまた旅に出た。笑顔で見送るエミルとうつむいたままのニノ。二人に見送られ空を行くと綺麗な夕焼け空が彼女を迎えてくれた。その空を見て、イレイナは思い出した。物語の結末を。夫が集めてきた外の世界の景色を見た妻は、ベッドから抜け出せない自分の現実を思い知らされ、絶望し自ら命を絶ってしまったのだ。

 人のために、と思って行った行動がいつでも正しいとは限らない。今回、エミルがした行動でニノがどうなったかをイレイナは知りたいとも思わない。彼女は気ままな旅人なのだから。

 とにかく重たい話の二本立て。本当に、世の中には綺麗で楽しい景色だけが広がっているわけではないのだ。イレイナが過干渉しすぎず、ただの一人の旅人として旅の先々で出会った人たちと関わる、というスタンスも見ていて気持ちがいい。次回、彼女はどんな出会いを果たすのだろうか。

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