“生涯ドルヲタ”ライターの「アイドル深夜徘徊」vol.45

【書評】不思議な同居生活の関係性を読み解く――大木亜希子著『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』

 私は猫を飼っている。8年ほど前、道端でニャーニャーと鳴いていたのを連れてきたのだ。まったくの私の空想ではあるけど、ササポンにとって、大木氏はこの猫のようなものではないだろうか。

 ご承知の通り、猫は犬に比べて、常時甘えてくるわけではないし、気の乗らない時は別の部屋に行って、一人で昼寝などをしている。気楽に、自由に暮らしているのだ。

 でも、このくらいの関係が、実は心地いい。正直に話してしまえば、私は猫に仕事のグチを聞いてもらうことだってある。もちろん、大体黙って聞いているか、せいぜい途中であくびをするぐらいだけど。でも、聞いてもらっただけで心が落ち着くのは確かだ。そして、この猫の存在が、私にとっては、とてもかけがえのないものなのだ。

 拾ってきた猫に例えては、著者も気を悪くされるかもしれないが、人と一緒に暮らすことのできない私が、ササポンの気持ちを推測した結果のことなので、どうかご容赦いただきたい。

 そして、考えてみたいのは、なぜササポンは、著者を同居させたのかということだ。

 ササポンは、ただ単に家賃収入のために人を住まわせたのではないと思う。もちろん別に変な気があったということでもない。ただ、歳を重ねるとわかる。家に帰ったときに、なにがしかなの“いのち”が待っていてくれる、それがどれほど心を暖かくし、気持ちを前に向かせてくれるか。同世代のひとりのおっさんとして、そんな気がしている。

 では、この二人の「関係性」が一体何かと考えると、やっぱり愛情という言葉が一番近いんじゃないかと思う。男女の愛とか、家族愛とかともまた違う、「楽にしていられる愛」。いい名前が見つからないけど、それでいいような気もする。

 そして、この本を読んでみて、大木氏もササポンも、幸せに暮らしていてほしいと思った。これだって、遠いところにいる人を思う、愛情の一種のような気がする。

 この関係性が不思議に思ったら、まずは本書を読んでみるといい。誰に感情移入するかは、人によってさまざまだろう。でも、この世にあふれている「関係性」と「愛情の形」が、あなたが知っていた以上に多様で面白いことに気づくことは間違いない。そして、少しだけ、世の中が広く感じるようになることだろう。

(文=プレヤード)

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