薔薇族だった時代 ~ゲイに対する「カミングアウトの可否」第54回

薔薇族だった時代 ~ゲイに対する「カミングアウトの可否」第54回の画像1撮影:津田広樹

 薔薇族編集部に勤務していた昭和後期の時代も、ゲイビデオレーベルを22年間毎月制作していた平成時代も、ゲイに対する「カミングアウトの可否」を、私自身は考えたことがなかった。カミングアウトして良かったとか、するべきではなかったとか、ゲイ仲間の声に対して反応するに留まっていた。

 元号が令和になった今年、6月1日にサイゾーイベントスペース で開催された「伊藤文學講演会」 にて、伊藤文學さんは、「カミングアウトは、必ずしもすべきではない」的な発言をなさった。私もそう人に言いたくなる出来事が 、今年私に発生してしまった。

 6月下旬に初めて同窓会に参加した事をきっかけに、中学時代の親友と約40年ぶりに電話で話すようになり、8月に喫茶店で待ち合わせをした。すっかりオッサンになった同士でも、中学時代のまま時が止まったかのように思い出話に弾んだ。

 中学時代はお互いに好きな女性アイドルがいて、一緒にイベントに出かけたり、お互いの家も行き来するほどの親友だった。つい気を許して「実は、中学時代からバイだったんだよね」と言った私に、笑顔だった親友の顔が一瞬で険しい表情になり「え?」 と眉をしかめたのだ。

 優しい性格の親友の、まさかのリアクションに私は、「あ、つまり・ ・・女子が宝塚に憧れるような同性への憧れみたいなライトなやつだよ、エッチなイメージじゃなくてさ」と続けると、親友は「それならよかった」と笑顔に戻った。しかし、私は混乱してしまった。

 LGBTQがなんたるか、未だ理解できない人間なのか? 理解し ようとしないのか? 何か嫌な体験をしたのか?  彼に聞くことが出来ず、話題を当り障りないものに変える努力をするしか術がなくなった。私は疲れ果ててしまい、そんな自分に落ち込んだ。

 伊藤文學さんは数々のカミングアウトの事例をご存じの、いわば生き字引のような方だから、カミングアウトした後の人々の人生を見透かされていたのかも知れない。

 さりげなく撮影した令和元年6月1日の文學さんの講演会時に主催者の方のお気遣いから用意された一輪の真っ赤な薔薇を、津田広樹の世界観で撮影してみた。自分でも気に入っているこの画像を伊藤文學さんにお見せしたら「良い写真だね。この一輪の薔薇がテーブルの上に置かれていたから、穏やかな気持ちで講演ができたよ」と仰っていらした。

 そんな伊藤文學さんが、薔薇族編集長時代にお墨付きを頂けた「津田広樹写真集」を令和元年に限定電子版にしてシリーズ化しているので、下記の津田・・・から始まるTwitterアカウントから ぜひともご覧いただきたい。

【津田広樹プロフィール】
 いわゆる80年代アイドル全盛の時代にスチール撮影のみならず、その多才さを認められてグッズ等の企画発案にまでもマルチな才能を発揮したキャリアをもちながら、あらたなる新天地として当時の有力ゲイ雑誌であった薔薇族の出版会社に編集部員として転身。その後もさらにその非凡なる才能の昇華は衰えを知らず、グラビアや企画ページ等にも幅ひろく手腕をふるい、多くの絶賛を得るまでにおよぶ。そして1996年にはゲイ業界初の試みであった3D写真集付き映像ビデオ、ジャック・リードを発売し世に送り出した。
 さらにオリジナル競パン付きDVDの発売など革新を起こし続けるも、無断配信に苛まれ、2018年に全ての映像ソフトのレーベルを手離す。しかし長年ににわたり不変的な価値観を持ち続ける津田広樹の世界観は色褪せることのなく、その真価を現在も世に問い続けている。

津田広樹Twitter
@Wi08XKZE10Vb5rx

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