薔薇族だった時代 ~中学時代に邂逅した『薔薇族』…しかしまだ偏見のある時代だった 第53回

薔薇族だった時代 ~中学時代に邂逅した『薔薇族』…しかしまだ偏見のある時代だった 第53回の画像1薔薇族 第25号

 人生で初めて『薔薇族』を見たのは、当時応援していた女性アイドルのファンクラブにポスターを貰いに行った帰りに立ち寄った、老婆がレジにいるだけの小さな本屋だった。当時私は、中学3年生だった。

 この青い表紙を鮮烈に記憶している。『薔薇族』巻頭カラ ーグラビアに全裸の青年が前向きにしゃがみこみ、股間が背の高い電気スタンドの足で隠れているも、陰毛は丸見えだったので、 衝撃を受けた。

 陰毛さえ見えてはならない厳格な昭和の時代。私が見たそれは、薔薇族としても伝説のグラビアだったはずだ。

 このグラビアを何回も見たいと、私は思ってしまった。老婆がレジにいるだけの本屋だったという幸運があり、この薔薇族を購入できた。

 中学生で実家暮らしだった。だから命懸けで封筒に二重入れて塾に行くための参考書の下に隠して見つからずに済んだのもラッキーだった 。

 薔薇族を見るときは、家族が完全に寝静まった深夜に受験勉強をしているふりをしながらだった。慎重に慎重を重ねた。

 調子に乗った私は、薔薇族から発売されていた写真集を小遣いを貯めて購入しようと本屋の老婆に頼んだ。アナログだった昭和なので、本の取り寄せは1ヶ月くらいかかると思っていた。しかし、翌週には届いてしまった。私がアイドル誌を立ち読みしていると、「注文された本が来てますよ」と言われた。そういうときに限って老婆ではなく、老婆の娘さんの中年女性が店番をしているときだった。

 油断していた驚きと、若さゆえのいくばくかの恥ずかしさもあって、私は老婆だけの日に改めようとつい、「僕、知りません」と言ってしまった 。中年女性は「あら変ね、貴方じゃないの? そうよねこんな本は、中学生が見る様な本じゃないものねぇ」と言い放った。その時の彼女の睨む様な目が、とぼけた私への嫌みだと感じた。そして私は、二度とその本屋に行くことはなかった。

 本屋経営者の家族でありながら「こんな本」発言……。いま思い起こすと、まだゲイへの偏見が蔓延していた時代だった。その時の悔しさから『薔薇族』編集部勤務に辿り着いたのだと思っている。

 この表紙の『薔薇族』が、人生で初めての『薔薇族』だったと思い出したのは、今年6月に訪れた「荻崎正広コレクション  ゲイ・アートの家」の書庫だった。表紙のインパクトは、重要だと今更ながら思い知らされたと同時に、好奇心旺盛な中学生時代にタイムスリップしてしまった令和元年だったのだ。

 私が、津田広樹撮影カラーグラビアを薔薇族巻頭に任されていた時代に伊藤文學編集長からお墨付きをいただいた、体育会系男性の写真を限定電子版「津田広樹写真集」としてシリーズ化しているので、下記の津田……から始まるアカウントのTwitterを覗きにきていただきたい。

【津田広樹プロフィール】
 いわゆる80年代アイドル全盛の時代にスチール撮影のみならず、その多才さを認められてグッズ等の企画発案にまでもマルチな才能を発揮したキャリアをもちながら、あらたなる新天地として当時の有力ゲイ雑誌であった薔薇族の出版会社に編集部員として転身。その後もさらにその非凡なる才能の昇華は衰えを知らず、グラビアや企画ページ等にも幅ひろく手腕をふるい、多くの絶賛を得るまでにおよぶ。そして1996年にはゲイ業界初の試みであった3D写真集付き映像ビデオ、ジャック・リードを発売し世に送り出した。
 さらにオリジナル競パン付きDVDの発売など革新を起こし続けるも、無断配信に苛まれ、2018年に全ての映像ソフトのレーベルを手離す。しかし長年ににわたり不変的な価値観を持ち続ける津田広樹の世界観は色褪せることのなく、その真価を現在も世に問い続けている。

津田広樹Twitter
@Wi08XKZE10Vb5rx

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