「大手まんぢゅう」が岡山名物となった秘策は「コマーシャルの大勝利」だった

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大手まんじゅう公式サイトより

 最近では、岡山名物としてきび団子と並ぶ知名度を持つ「大手まんぢゅう」。東京・新橋に岡山県が鳥取県と共同でアンテナショップをオープンしてからは気軽に買うことができるので出身者としては嬉しい。

 あ、本題に入る前に……たまに「むらすゞめ」を岡山名物とウソをつく人がいるが、あれは倉敷名物であって岡山名物ではないので、念のため。

 そんな「大手まんぢゅう」は、岡山市内を走る路面電車でラッピング電車を走らせていることでも有名だ。そのラッピング電車が今月からリニューアルされたということで、話題になっている。

路面電車30年ぶりにデザイン一新!(大手まんじゅう公式サイトより)

 岡山駅前から二路線が運行される路面電車。そこを走るラッピング電車は「大手まんぢゅう」の創業以来の伝統といえるものだ。

「大手まんぢゅう」を製造販売する大手饅頭伊部屋は天保八年(1837年)創業である。とはいえ、これはゼロからオリジナルで出来上がったものではない。あまり日持ちがしないために「大手まんぢゅう」に比べて知名度は劣るが見た目もほとんど同じ「藤戸まんぢゅう」は、もっと歴史が古い。

 ようは、創業当時の江戸時代には似たようなものがいくつもあったのに、「大手まんぢゅう」が一歩知名度で抜きんでて岡山名物の地位を獲得したわけである。

 そうなった理由は、なによりコマーシャルが上手かったからである。

 もともと「大手まんぢゅう」のルーツは、大阪にあった。江戸時代に大阪に虎屋という饅頭屋があり、ここは「小判型の厚皮饅頭」が評判になっていた。あまりの評判に全国各地にのれん分けで店は増えていって江戸時代後期には岡山のあちこちに支店が出た。

 そこで奉公をしているうちに主人に信用されて饅頭屋を始めたのが大手饅頭伊部屋の初代である。ただ、岡山にはすでに支店があったので、遠慮して厚皮ではなく薄皮の饅頭を始めたのである。

 今ならタピオカを使った台湾スイーツ店が大人気なので、こっちもタピオカを使ったスイーツで商売を始めようかという感じである。しかし、大人気の虎屋に対してあくまで亜流。決して商売が上手くはいかなかった。

 それでも何代かはもって大岸永吉という人が主人になった。この人が考えたのが宣伝である。

 当時、市内を流れる旭川は多くの船が行き来していたがこれに「大手」と書いた旗を立てさせて行き来させる。店の小僧に名水の出るところまで水を汲みに行かせる時も船に旗を立てる。店の中は通りから見えるようにして実演販売。さらには宗旨など関係ないと人の集まる神社や寺には燈籠やらなにやらを立てまくる。もちろん「大手」の文字は大きく彫るのだ。

 こうして、いつしか「大手まんぢゅう」の名前は知られるようになったと、岡山の郷土史家:岡長平の『おかやま庶民史 目で聞く話』にはある。どこまでホントかは今となってはわからないが、岡長平は昭和40年に80歳で亡くなった人なので、実際に見た人から聞いた話なのであろう。

 こうして見ると「大手まんぢゅう」がラッピング電車を走らせるのは、やっぱり伝統じゃ。

(文=昼間 たかし)

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