『ルパン三世 The First』最大公約数的で子供向けの薄味　シナリオはチープで、広瀬すず演じるヒロインが出張りすぎな件

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■チープで安易な謎解き、異常に出番が多い広瀬すず

　レティシア役を演じた広瀬すずさんは、ルックスは抜群ですが、声質は少し鼻にかかっっていて、声自体はさほどかわいいとは思いません。あのルックスありきだから、顔出しのドラマや映画では、この声もかわいく感じるだけで。

　だというのに、このレティシアの出番が異常に多く、次元・五右エ門・不二子の3人を合計した分ぐらいのセリフがあります（体感では）。

『ルパン三世』の新作を見に来たはずなのに、『ルパン三世 The First』ではぽっと出のゲストヒロインのストーリーを延々と見せられれるのです、しかも声優としては向いていない若い女優さんの演技で。「いったい何を見せられているのだろう？」と、疑問を覚えるほどでした。

　ちなみに、物語の本筋からすると、あってもなくても成立するストーリーなんですよね、このヒロインのストーリーは。キャラクターの造成的に、『カリオストロの城』をクラリスを意識した部分もあるように見受けられますが、「すっごい滑っていますよ」と伝えたい気持ちでいっぱいです。

　また、秘宝「ブレッソン・ダイアリー」の謎を解くというのも、物語の鍵であるはずなのですが、謎解きが安易でチープ。暗号を解くシーンなど、銀行の暗証番号のほうが難解なほどです。山崎監督は、推理小説を読んだことがないのでは、と心配になりました。

　初代ルパンが盗めず、ナチスも狙っていた財宝、舞台は1960年代後半（っぽい何か）と、『ルパン三世 The First』の謳い文句や設定はいい感じなのですが……ストーリーの出来は、普段のTVスペシャルと比べても、中の下ぐらいと思っていただければ、しっくりくると思います。

　パンフレットでは「（脚本は）12稿までブラッシュアップ」などと自慢していますが、12稿ぐらいはアニメ業界では稀によく聞く回数です。逆に一体何をブラッシュアップしたのか、こちらの謎のほうが、『ルパン三世 The First』で語られる謎よりよほど深刻で難解です。

■金曜ロードショーまで待機が吉

『ルパン三世 The First』のルパンは女の子に優しくお人好し、銭形警部はルパンにコケにされまくりで女の子に弱く、あっさり逮捕よりも共闘を選びます。『ルパン三世』はクリエーターによって、その性格や雰囲気が大きく変わりますが、『ルパン三世 The First』はお子さまでも楽しめる、明るいルパンを目指した作品です。

　一方で、先述の『カリオストロの城』を意識したとおぼしきカップラーメンをはじめ、『ルパン三世』TVシリーズのオマージュらしきシーンが、『ルパン三世 The First』はあちこちで登場し、一応オールドファンへの配慮も窺えます。

　ルパンを捕まえようと飛びかかる警官が積み重なって山盛りになったり、ルパンが逃亡するシーンではシャンデリアを掴み上空に飛び上がっていく、ルパンの袖口から湧き出てる煙幕……懐かしく思える方もいるかもしれません。

　オマージュの対象となっているのは主に『カリオストロの城』。また、キャラクターデザイン的には、TV第2期シリーズ、通称「赤ジャケ」ルパンを踏襲しています。

　TV第2期シリーズは最も制作・放送話数が多く、ルパンやアニメファンではない人が「ルパン」と聞いて連想するのは大抵は、この第2期シリーズでしょう。

『ルパン三世』のファン層における最大公約数を狙った選択で、無料で見られるTVスペシャルならば、それで問題なかったと思います。

　しかし、いくら50年以上も愛されてきた、国民的キャラクターである『ルパン三世』であっても、わざわざ映画館へ足を運ぶのは、ファンやマニアが主流でしょう。そんな客層が、決してルパンマニアではないクリエーターによって、マスを狙って制作されたと思しき薄味の作品で満足するでしょうか。筆者は、満足しないファンが多いと思います。

　山崎監督は2019年、『アルキメデスの大戦』『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』、そして『ルパン三世 The First』と、3本もの映画制作に携わっています。

　それぞれ準備期間は異なるでしょうが、普通そんなに量産できるものなのでしょうか。『ドラゴンクエスト』『ルパン三世』と、長く支持されてきた大人気コンテンツを、深く勉強もせずに、さらっと制作したように感じたのは筆者の気のせいでしょうか。

　なお、パンフレットによると、山崎監督は2015年秋から制作に入ったそうですが、モンキー・パンチ先生と会ったことがないと語っています。そんなに忙しかったのなら、ムリせず制作を請け負わなくても良かったのに。

　……といったわけで、『ルパン三世 The First』は、初めて『ルパン三世』に触れる、というお子さまと広瀬すずさんファン以外には、あまりおススメできません。

　製作委員会には日本テレビも名を連ねていましたから、そのうち金曜ロードショーで放送されるでしょう。その日まで待つのが吉です。無料であっても、「2時間損した！」と怒り出すルパンファンが発生しそうな気もしますけど。
（文・馬場ゆうすけ）

 
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