薔薇族だった時代 ～自分の分身といえる映像作品群　第50回

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画像提供：津田広樹

　昭和57年、初対面から伊藤文學さんとは以心伝心的な波動を感じ、即日第二書房(薔薇族編集部)に入社させてもらった。津田広樹撮影の写真を、自らのレイアウトで薔薇族グラビアに掲載させてもらった。文學さん運転のワゴン車で毎月薔薇族を納品したのは、懐かしい日々だ。

　先のコラム記載の藤田竜さんトラブルにより編集部を離れた後、映像作品インディーズ時代を経て、自身の店売りビデオレーベルを発売した。平成8年には、薔薇族紙面にクライアントとして広告を掲載し、グラビア写真を提供するに至った。

　上記画像は、自身のビデオレーベル初回号の特典だった3D写真集の1ページだ。ゲイビデオ業界として初の試みで大ヒットし、平成30年迄の22年間で、約300作品のビデオを津田広樹の世界観で作り続けた。

　文學さんが「これまで出版した本は僕の分身の様なもの」と仰ったが、津田広樹の分身は22年間毎月発売し続けたビデオ作品だ。

　しかし、海外サイト等の違法配信に苛まれ店売りが激減した。困り果てた結果、昨年の11月に、大手のゲイ配信会社に発売してきた作品を全て売却した。そのおかげで病床のビジネスパートナーの医療費や生活を約３カ月、繋ぐことができた。

　平成から令和へと時代が変わったが、私は単身看護生活ということもあり、なかなか新しい仕事に就けないでいた。実は、過去のレーベルは手放したものの、新レーベルの立ち上げ準備を進め、再起を狙っていた。

　しかしいよいよ困窮し、新レーベルに使うために用意していたロゴや新レーベル用の映像を再び売却に踏み切ろうとした。ところが救世主となった昨年売却した会社を含め、このたった約１年でゲイ業界は、売却先が皆無になったことを知った。

　そこで昨年売却したレーベルの中古作品を積極的に販売されていた、ゲイ業界ではない会社に営業をかけた。 即座に「ぜひとも」との返答をいただき、その会社に伺った。

　私が責任監修をする流れで話を進めた。マスター映像や誓約書等を発送し、毎日メールでジャケ写候補等の詳細をやりとりし、1週間が過ぎた。だが突然、肖像権に不安がある、と法務部が難色を示してきた。

　私には過去に他社と取引した実績もあったため、何のトラブルがないことを証明する文書をその会社の法務部宛に提出したが、結局契約は破棄となった。

　 究極のジャケ写と未公開映像、全て私の珠玉の分身だった映像作品が、陽の目を見れない現状に戻ってしまった。ゲイ業界37年のキャリアから、平成8年に１日200本以上売れていた最高峰の作品群を責任監修したのに、残念でならない。この一件により、私は心身ともに疲れ果ててしまった。

　37年間、父の様であり恩師の様でもある文學さんは、長年私の世界観を認めてくださっている。文學さんが、 私にかけてくれる言葉を想像しつつ、前向きに薔薇族で磨き上げることができた「津田広樹の映像世界観」の新境地を買取ってくれる会社を探していきたい。このコラムを見て、興味を持たれた方はぜひご連絡いただきたい。

　私が、薔薇族カラーグラビアを任されていた時に全身全霊で撮り続けた他に類をみないスポーツマン画像を「津田広樹写真集･限定電子版」にしてシリーズ化している。珠玉の作品ばかりなので、興味のある方は、下記のTwitterアカウントをクリックして見ていただきたい。

【津田広樹プロフィール】
　いわゆる80年代アイドル全盛の時代にスチール撮影のみならず、その多才さを認められてグッズ等の企画発案にまでもマルチな才能を発揮したキャリアをもちながら、あらたなる新天地として当時の有力ゲイ雑誌であった薔薇族の出版会社に編集部員として転身。その後もさらにその非凡なる才能の昇華は衰えを知らず、グラビアや企画ページ等にも幅ひろく手腕をふるい、多くの絶賛を得るまでにおよぶ。そして1996年にはゲイ業界初の試みであった3D写真集付き映像ビデオ、ジャック･リードを発売し世に送り出した。
　さらにオリジナル競パン付きDVDの発売など革新を起こし続けるも、無断配信に苛まれ、昨年に全ての映像ソフトのレーベルを手離す。しかし長年ににわたり不変的な価値観を持ち続ける津田広樹の世界観は色褪せることのなく、その真価を現在も世に問い続けている。

津田広樹Twitter
@Wi08XKZE10Vb5rx

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