『HUMAN LOST 人間失格』が全然『人間失格』ではない件　なおSFアクションとしては普通に高クオリティー

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　不朽の名作、太宰治の『人間失格』を“SFダークアクション”に！　スーパーバイザーは『踊る大走査線』の本広克行！　脚本は売れっ子作家の冲方丁！　そして、監督には『アフロサムライ』『バジリスク ～甲賀忍法帖～』で知られる木﨑文智！

　勇ましい触れ込みのもと、11月29日に公開された劇場アニメ『HUMAN LOST 人間失格』。『人間失格』という題材のチョイスから、一般映画ファンに向けた、質アニメのように受け取る方が多いかもしれません。

　しかし冲方氏は『蒼穹のファフナー』シリーズや『PSYCHO-PASS サイコパス 2』などに携わってきた、アニメと縁の深い作家さんです。その上アニメーション制作はポリゴン・ピクチュアズが務め、メインキャストは宮野真守さん、花澤香菜さん、櫻井孝宏さんと人気声優が固めています。

　興味を持っているアニメファンも多いことでしょう。内容を紹介しつつ、レビューしてみます。

■割とよくあるSF世界を高レベルで描写

　さて、『HUMAN LOST 人間失格』の舞台は昭和111年、四大医療革命“GRMP（グランプ）”と健康保障機関”S.H.E.L.L.（シェル）”によって、全国民が病苦と怪我を克服し、平均限界寿命120歳を実現。

　環境に配慮しない経済活動と働いて働いても壊れないからだを得たことで可能となった19時間労働政策の末、GDP世界1位、年金支給額1億円を実現した無病長寿大国・日本、東京。

　大気汚染が広がる“アウトサイド”で自堕落な日々を送っていた大庭葉藏は、特権階級が住まう“インサイド”へ、暴走集団とともに突貫。そこでロスト体と呼ばれる異形体との闘争に巻き込まれてしまいます。

　そこで、葉藏は自らも異形体へ変身を遂げ、凄まじい力を振るいます。暴走しかけた葉藏ですが、S.H.E.L.L.の少女・柊美子に救われます。美子とS.H.E.L.L.、そしてロストを操る力を持つ堀木正雄に翻弄されていくのでした……といった物語が展開されます。

　汚染された環境、管理される社会――SFでは割とよくある世界観設定ですが、雰囲気はいいです。冒頭に出てきた近未来の高田馬場、汚染された大気の中、ガスマスクを装着して通勤する社畜の群れの描写などは、かなり雰囲気が出ています。また、寿命が延びまくった結果、特権階級に居座る老人たちに搾取されるという設定も、刺さるものがあって、ナイスです。

　また、ポリゴン・ピクチュアズによるCGも良い感じです。キャラクターたちの表情は実に豊かですし、アクションも見応えあります。特に映画序盤の、暴走集団のバイクアクションは特筆もの。

　ロスト、GRMP、S.H.E.L.L.と序盤からオリジナル専門用語がバンバンと飛び出すため、面食らう視聴者もレビューなどを見ると多いようですが、『蒼穹のファフナー』や『マルドゥック・スクランブル』を観てきた方であれば、問題ないでしょう。

　木崎監督の演出も巧みで、SFダークアクションものとしては過不足ないクオリティーと言えるでしょう。ただ、この作品の一体どこが『人間失格』なのか、問い合わせたい気持ちで一杯になりました。

 
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