【インタビュー後編】

「江戸時代の家には〇〇がない」――歴史監修者に聞く、歴史トリビア

■歴史トリビアその2「昔の人たちは同姓同名がいっぱい」

榎本 あと気を遣うのが名前です。江戸時代は代々伝わる名前があり、例えば伊達家では名前に「宗」がついて、そこに権力者の名前を一文字もらったりするんです。たとえば伊達政宗の長男は側室の子供で豊臣秀吉から名前を一文字もらって秀宗、正室の子供は徳川秀忠より一文字もらって忠宗です。

 また、独眼竜の伊達政宗自身も、伊達家中興の祖の、別の「伊達政宗」が祖先にいて、その人にあやかり政宗と名づけられました。「権力者から一字もらう」「有力者の祖先の名前を引き継ぐ」は当時よくある名づけ方です。さらにすごいところでは、常に同じ名前を継ぐ一族もいるんですよ。

――落語家の襲名みたいですね。 

榎本 この場合は〇代目の〇〇、と呼んだりしますね。

 また、「本多さん」や「松平さん」はたくさんいますよね。ただでさえ多い苗字なのに、当時の名前の付け方のルールだと、同姓同名が出てくる可能性があります。実際に、wikiなどで松平さんの名前を見ていくと同名が同じ時代でもいます。

 当時は、名前以外になんとかの守とか大膳大夫などの官職名も名乗ったので、名前が同じでも区別はできたと思います。

――そうなると、歴史コンテンツで「どこそこ藩の松平太郎(仮)さん直伝の刀」を書いてみたら、実はその刀は別の藩の松平太郎さんの刀だった、みたいなことになりかねないと。……ややこしいですね。

榎本 そうなんです。ややこしいんです。似たような方向性では、「代々名を継ぐ芸能人のうち、三代目の人をキャラクター化することになって、エピソードを盛り込んでみたら、それは本当は五代目の人のエピソードだった」なんてことも十分あり得ます。なのでこの辺りはふわっとさせましょうとコンテンツによっては提案したりもしますね。「〇〇さんが持っていた刀」みたいな固有名詞は避け、ふわっと「この時代風の刀」にしてはどうですかと。

■歴史系トリビアその3「江戸時代の家には、アレがない」

榎本 あとは歴史監修において「明らかにこの時代には存在しなかったもの」は気を付けています。例えば江戸時代の武家屋敷には「表札」がないんです。だれが住んでいるかわかるから、出さなかったんです。

――「殿様が懐からスマートフォンを出す」なんてことは誰もやらないでしょうけど、「表札」は現代の感覚で生活していると、ついうっかり描きかねないですね。

 榎本さんは歴史監修の仕事以外に、ご自身で歴史小説も書かれていますが、ご自身が書かれるときにはどういったことに気を付けていますか。

榎本 僕の場合、まずキャラクターありきです。まったく架空のキャラクターを作って、このキャラクターが活躍するのに似合う歴史はどれか、という順番で考えていていますね。歴史上のどの事件とくっつけると主人公が花開くかなと。実在する歴史上の人物が脇役にいるような形です。また、時代小説には先輩作家の皆様が培ってきた作法もありますので、その中でいかに自分なりの魅力を出せるかを考えています。 

(文/石徹白未亜 [http://itoshiromia.com/])


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