やったよ! 韓国の妙な音楽が満載!! 釜山の露店でポンチャックマシーンを手に入れたぞ

 このまま見つからずに終了かと思いながら、松島にいった帰り道にふと立ち寄ったのが忠武洞市場。隣接するチャガルチ市場は『地球の歩き方』などにも詳しく掲載されている観光地。対して、忠武洞市場は観光客なんてほとんどいない地元民向けのエリア。岸壁では、釣りをしているおじさんとか、その様子を見ているおじさんとかが背中で語っている。イヤホンをつけて『釜山港へ帰れ』を聞くには、もっとも適した場所である。

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 市場には海産物もあれば、キムチもわんさか。今回、帰国は飛行機だったのでキムチの大量購入はできず「カニのキムチとか美味そうだな……」と横目で見ながらトボトボ(註:キムチを大量購入するなら帰国は関釜フェリーか高速船で。帰りの新幹線をキムチ臭くする恐れもあるけど)。

 と、耳に入ってくる、ダサいけど「俺は好きだよ!」と胸を張っていえる音色。何度か、その方向へいってみたが、たいていは店先のラジオから流れる音である。

 それを繰り返すこと数度。ついに目の前に露店が現れた。

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 なんだかわからないが色あせたジャケットの。誰だかわからない歌手の歌声。CDどころかカセットテープまで並べられている店。そこには、あのポンチャックマシーンがいくつも置かれているではなかろうか。

「こ、これは……」と発見した感動に震える筆者に、店先のオモニは「なんだ、この日本人」という顔。ともかく、翻訳ソフトで「これ、音楽が入ってますよね?」と尋ねる。

 首を縦にふったオモニは日本語で「韓国ミュージック! 3万と4万」という。日本円で3000〜4000円で、夢の機械が!

 ここはよりチープなほうが感じが出るだろうと指を三本。納得したオモニは並べられていたポンチャックマシーンから、箱に入っていないビニールに包まれているだけのものを取る。うん、このチープさがたまらない。

 なんだかわからないが、こうした時に妙に懇切丁寧になるのが韓国人テイスト。

「スイッチ、オン、オフ」

 と、実際に電源をいれて使い方を説明。付属品のコンセントとUSBケーブルで充電のジェスチャーも。それから取り出したのは紙一枚の収録曲リスト。2000曲目あたりを指さしたオモニは「ズンチャズンチャ」とこれまたジェスチャーつきで説明を。なるほど、このあたりからポンチャックということらしい。

 こうして入手出来たポンチャックマシーン。SDカードに入っている曲は、買う店によって様々なようだが筆者の入手したものは4077曲が収録されている。

 まず、どんな曲が入っているのか知るために1曲目から順に聞いているのだが、ひとまずはトロットが大目。言葉はわからないのに心に染みる歌声が次々と流れてくる。

 ポンチャックやトロットのすごいのは、言葉が通じなくてもなんだか妙に楽しくなったり、心に染みてくることだ。こればかりは、言葉で書いてもわからないのでYouTubeで検索して適当な曲を聴いてみてくれというよりほかはない。

 今も原稿を書きながら2066曲目に突入したのだが、どういう都合かライブ音源と思しき黄色い歓声の混じる誰だかわからない男性歌手の、こぶしのきいた演歌みたいなのが始まった。思わず心にぐっときてキーボードを打つ手が止まる濃さである。

 気分を入れ替えたい時。悲しい時や楽しくなりたい時に一家に一台あれば役に立ちそうなポンチャックマシーン。近々、4077曲全部聞く宴会を開きたいと考えているのだが、どうか。
(文=昼間 たかし)

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